浮遊戦艦の中で183


「あ?」

 剣崎はきょとんとして立ち尽くした。彼女の言っている言葉の意味がまるで理解出来ないからだ。

「な、何をいっているのかね、フーリンシア君! この俺と、この〝烈火〟というアンドロイドのどこがそっくりだと言うのだ!? 人をおちょくるのもいい加減にしたまえ! 仮にも俺は君の上官で、しかも今は大事な作戦遂行中なのだぞ!!」

 剣崎は馬鹿にされたと思い、思わず大声でまくしたてるが、

「あら、何を仰っているのです、大佐? 私が今までどれだけ大佐のことを思って生きて来たのかご存じありませんの?」

「ご存じありませんの……って、あるわけがなかろう!! 第一、このアンドロイドの見た目と俺との見た目の違いの説明からしてくれんと……!!」

 剣崎が怒るのも無理もない。なぜなら、剣崎の見た目は誰がどう表現しようとも〝熊〟である。実際に彼は筋骨隆々でがたいが良く、背丈も二メートル近くあるものだから、周囲からは、

「鬼の金熊ゴールデンベアー大佐」

 などという愛称がまかり通っている。

 にもかかわらず、まるで華奢な見た目の〝烈火〟のモデルが剣崎であるというのは余りにも無理がある。いや、主観的にも客観的にも決して剣崎であろうはずがない。

 しかし、

「いえ、大佐。そこまで仰るのなら、こちらに証拠が御座います」

 彼女は言って、技師チームの部下にパチクリと目で合図を送った。

 すると彼女の部下たちは、返事も言葉も一切交わさず、無駄のない動きで剣崎の目の前にホログラミング装置をセットした。

「大佐、これを御覧なって下さい」

 フーリンシアは言って、装置のスイッチを入れて画像を空中投影させると、

「良いですか? こちらが以前の戦乱の時の作戦行動中に盗み撮りした剣崎大佐のお姿です」

「な、何だ? その盗み撮りって言うのは……?」


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