浮遊戦艦の中で179
この時、傍らで
(あの女、何が可笑しい……。あ奴が意表をついた攻撃を仕掛けたのも、あの女の差し金か……?)
剣崎は冷や汗を滴らせ、ゴクリと喉を鳴らす。
これでは四面楚歌である。この闘技場に居るのは、自分以外はこの戦艦を司る人工知能と、それを製作した技師チームのみ。
その技師チームのトップであるフーリンシア大尉の呼びかけに応じ、事態に促されるままこの場に足を踏み入れてしまったが、
(気づけばもはや遅し……。俺はもう、こいつらの手のひらの上で踊らされている……)
とういう状態でしかない。
この時点で、彼の積み上げて来た戦略家としてのプライドはズタズタに引き裂かれている。
(ひとえに戦略家としてその名を
剣崎は、おのれの不甲斐なさを恥じ、奥歯を思い切り噛み締めた。
もしやもすれば、フーリンシアのあの不敵な笑みは、そういった愚行を嘲笑したものなのかもしれない。剣崎の脳裏に思い浮かぶのは、これから起きる最悪な状況である。
(もしこれが……。もし、このフーリンシアという女がシュンマッハの手先であったなら最悪だ。敵性のシュンマッハが、今後起き得る何らかの想定に対しこのような女を潜り込ませていたならば、このような罠に引きずり入れてしまうことも考えられる……。いや、もしこれが別の敵性を持った何らかの勢力によって仕掛けられた罠だということすら考えられる……)
剣崎は熊のように大きな体躯を強張らせ、手持ちの薙刀をひしと構える。
その時――
「ぐおっ……!! な、なんだ!?」
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