浮遊戦艦の中で166
マリダ親衛隊と、女王討伐隊の交戦は激しさを増すばかり。
静けさの森の中に身を置いて、マリダはその輝く命のともし火のやり取りをじっと見つめていた。
今まさに彼女は悩んでいた。自分があの場所に帰るべきか。帰らざるべきか。
帰ればやはり、これまでと同じように彼女は女王としての役目を背負わなければならない。
確かに彼女は、母クラルイン博士に今後の世界をまとめ行くための役目を負わされて生まれ出て来た事実がある。
しかし、彼女が背負わされたのはそれだけではない。羽間正太郎を始めとした新人類〝ホモサピエンス・サピエンス・ヴェルデムンダール〟のデータ収集を兼ねた観察任務も兼ねているのである。
それは、最長五、六年という短いアンドロイドの寿命の中で運命づけられた最も過酷で厳しい任務である。
「人々は、このように戦わなくては自らを表現できない生き物なのでしょうか……。戦い……。わたくしの中にあるこのような葛藤も、おそらくそれもきっと人々の長い歴史の中で星の数ほど生み出された戦いの一つなのでしょう。戦いは何も生み出さないと言う方もおられます。ですが……ですが、戦いが何かを生み出して答えを見つけ出すこともあるはずです」
マリダはこの時、彼女の思い人である羽間正太郎の姿を思い描いていた。
羽間正太郎のその姿からは、様々な戦いと冒険の中で次の時代を切り開こうとする生き様が垣間見えていた。
しかし、彼女の知り得る正太郎は、決して自分の身勝手な思いだけで戦ったり戦火を広げたりするような人物ではない。
そこには、人類史上誰も答えを見出していない時代のその向こう側を模索しようと尽力する底力のようなものがあった。
「ああ、わたくしもあの方と一緒に見てみたい。これから人々が遭遇するであろうまだ見ぬ未来を……。これから作り上げて行くであろう困難と言う名の戦いの向こう側を……」
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