浮遊戦艦の中で165


「ですが、この今後わたくし自身はどうすればよいのでしょう。この後、作戦で正太郎様をお救い出来たとしても、わたくしのこの真実をお伝え申し上げるべきか迷うところです……。一般的には、超人工知能神〝ダーナフロイズン〟の存在はのものであったと流布されております。なのに、このわたくしが、そのような存在の手先であったなどとあの方にお伝えしてしまえば、正太郎様から見たわたくしの立場は急こう配の雪山のように脆くも崩れ去って行ってしまうのは火を見るよりも明らか。わたくしのあの方への思いがどうしようもなく届かなくなってしまう可能性が高いのです……。もしそうなれば、今後わたくしは何を目的に生きて行けば良いのかの見当もつかなくなってしまいます……」

 これこそがマリダの葛藤なのだ。

 彼女はこの時点で、まるで人間のようだった。完璧なるアンドロイドの名を欲しいままに世間に認知されている彼女だが、実はそこのところ人間と何も変わらない。人々の為に行動を起こしつつも、自分の大切な部分を守ろうとする反作用が彼女を不安定にさせている。

 マリダ自身もそれは解かっている。

「あの時……シャルロッテを亡き者にしたわたくしの行動は、正にわたくし自身の立場を守るために過ぎなかった行為……。シャルロッテに対し、あれほどまでに偉そうなことを言っておきながら、わたくし自身がシャルロッテと同じ……いえ、それ以上に下衆な考えで行動してしまっていたのです」

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