浮遊戦艦の中で164


 しかし、マリダはその反面、薄々勘づいていたのである。それが、超人工知能神擁立派らの差し金であることに――。それが擁立派らが推しに推しまくっていた超人工知能神〝ダーナフロイズン〟の計算による超長期的な計画の一環であることに――。

「本当に忌々しい事だと切に感じます。このわたくしが、あのような人工知能神の手のひらの上で踊らされていたのです。そして、そんな腹黒い考えしか出来ない人工知能神の自律型端末機器のであることが悔しいのです。わたくしは、本来ならもっと自由にこの世界に生きたい。もっと自由に恋愛を楽しみたい。わたくしにとって大切な方たちと、もっと素敵な時を過ごしていたいのです……。この身体が朽ち果てる最後の時まで……」

 マリダは、まるで涙を落とすかのような仕草で、暗闇に染まる大森林を見つめた。

 彼女は、自らの活動期間を心得ているのだ。

 今の時代、アンドロイドの寿命は最長で三年。仕様によって異なるが、とても大切にメンテアップを繰り返していたとしても、最長で五、六年が良い所である。いくら彼女が最強で最高の仕様で製作されていたとしても、それだけは他の物と何ら変わらないのだ。

「わたくしは、擁立派の方々ばかりでなく、お母様をも裏切ってしまった経緯があります。それゆえ、このわたくしの身体に寿命が来たときに、お母様は決してわたくしの復活を望むことはないでしょう。たとえわたくしの中枢回路が無事であったとしても……」

 どの世界においても、裏切り行為は重罪である。よって、たとえ優秀なアンドロイドであるマリダであってもそれ相応の報復が待ち構えていることであろう。

 

 

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