浮遊戦艦の中で139


「こ、こんな、こんなことが……!!」

 マリダは、それ以上言葉が出なかった。否、そこに居合わせた全ての兵が言葉を失った。

 映し出された映像は、ペルゼデール・ネイションの中枢を担うステラヘイム公会議堂の前で行われているの模様であった。

 そこに集う民衆は誰もが殺気立っていた。

 およそ重戦車数台分がすっぽりと入るドーム状の鉄格子の中に、数人の老若男女が入れられている。

 一人は、歩くのも覚束ない老婆。そして一人は、年のころは三十代ほどだが、見るからに艶のある美しく品のあるいで立ちの女性。そしてその女性に寄りすがるようにして怯える二人の幼い子供たち。

 彼女らは、一様にして身体を縮こませ、互いをかばい合うように身を寄せ合っている。

 周囲を取り囲む民衆は、彼女らに分かりやすいほどの心無い罵声を浴びせまくっている。

 そして、一人の軍服をまとった男が、ためらいもなく腕を上げた刹那、そこに集った民衆が鉄格子の中に鉄の槍を一斉に投げ込んだのだ――!!

「な、なんてことを――!!」

 マリダがしかめ面で目を背けようとした、その時、

「う、うわあああああああ!!」

 漆黒の森の中に、男の悲鳴が響き渡った。それはまるで気でも狂ったような叫び声であった。

「え……。ま、まさか……!?」

 マリダは、男の悲鳴をその耳で聞いた時、瞬時に全てを把握した。と同時に、彼女はアンドロイドであるにも関わらず全身に冷たい衝撃を覚え、身震いが止まらず中枢の思考回路に異常を来しそうになった。

「な、なんてことを……」

 今の悲鳴は、間違いなく処刑された家族の兵士のものである。

 操縦桿を握る彼女の手が、動揺の震えで止まらなくなる。

「どうだ、分かったかね、|。これが我々の国、これが我らの生きる道なのだ。ここに集った兵たちには、今のが今後の規範ともなろう」

 信じられぬ映像、信じられぬリゲルデの言動に、マリダは怒りを通り越して絶望しか感じない。

 

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