浮遊戦艦の中で127


 二人は互いにうなずき合うと、それぞれがそれぞれのフェイズウォーカーへと乗り込んだ。

 親衛隊長のサガウルは、親衛隊専用のクイーンオウル高機動型に乗り込む。

 その機体には、彼が手塩に掛けて育て来たサポート人工知能〝オデュッセイア〟が備わっており、メーカー仕様のポテンシャルの二倍以上の性能を引き出すことに成功している。

 それとは対称的にマリダの搭乗するクイーンオウルⅡ型改女王専用機には、他者とは違いサポート人工知能が備わっていない。なぜなら、彼女自身が搭乗者とサポート人工知能の一人二役をこなしてしまうからだ。

「陛下、マリダ女王陛下。準備はよろしいでしょうか?」

「はい、わたくしの方はいつでもオーケーです」

「陛下、敵は分散せず、真っすぐこちらに向かってくることが予想されます。陛下は、私の機体の真後ろに位置したまま前進してください。敵方からの攻撃は、この私の機体が全て受け止めて見せます」

「いいえ、それではいけません。それでは全くの意味がありません。何度も言わせないで下さい! この作戦は、わたくしが前に出て敵の目を引くことが重要なのです! わたくしが前に出なければ何も成立しない作戦なのです!」

 言うやマリダは、自分の意識を補給型陸戦艇のハッチにコネクトする。そして、ロックを解除するといち早くスラスターノズルの出力を全開にし、まだ夜も明けやらぬ漆黒の大森林の中へと飛び出して行く。

「陛下の機体がお出になられた! 後の者たちも陛下と私の機体に続け! 絶対に後れを取るな!!」

 サガウルの掛け声とともに、他の補給陸戦艇から二体ずつのクイーンオウルⅡ型が出撃した。

 マリダ、サガウル、そして親衛隊一番隊の精鋭四名――計六名が走行する補給陸戦艇の前方に位置したまま進撃を開始する。

「補給艦よりフェイズウォーカー各機へ! 現在、当編隊の前方より向かってくる敵影をキャッチ! このままの速度で進軍すれば当方と三十秒後に接触します!!」



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