浮遊戦艦の中で105

  

 元々、リゲルデは医学の道を目指す苦学生だった。しかし、彼の戦略家としての才能を見出し仲間に引き入れたのはシュンマッハである。

 苦学生だったリゲルデは、特別な融資を得るためにある派遣活動に参加した。それがシュンマッハが居住していた特別紛争地域である。

 この時代にしばしば特別紛争地域という場所が存在する。

 特別紛争地域とは、民族間、国家間などのいさかいを武力行使によって当事者同士が解決するという特殊なエリアを指す。

 無論それを決めるのは、第三者として位置する国際連邦機関のことである。が、その実際には先述の拝金主義団体が裏で操作を行っているのが現状である。

 苦学生だったリゲルデは、その国際連邦機関の末端に位置する援助団体から融資を受けるために、紛争地域への医療援助目的でこの地に足を踏み入れたのであった。

 そんな彼の前に現れたのが、当時、小さなゲリラ団体の頭を務めていたシュンマッハである。

 シュンマッハは、わずか数十人しか居ないゲリラ集団を率いて、相手陣を取っていた。彼らは、彼らの根城としていた地域の自警団をも兼ねて活動していたが、無論それは金づるを確保する前提がそこにある。

 その区域には海外から派遣された各企業の住民が多く住んでいた。その小金持ちたちにシュンマッハは強引に詰め寄って、ゲリラ団体の資金源を調達していたのだ。 

 そんな区域に派遣されたリゲルデは、当初はシュンマッハという男を、

「この人は、なんて素晴らしい人だ! 身を挺してこの紛争地域から人々を守り抜いている。世の中にはこんなに命懸けで活動している人が居るんだ!!」

 と、感銘を受け、やがて心酔していった。

 

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