浮遊戦艦の中で67
迅雷五型改の機体が波しぶきを上げて突き進んで行くたび、前方に黒くて先の尖った幾何学的な造形の物体の様相が浮き彫りになって来る。
「あれが問題の浮遊戦艦……。あれじゃまるで、巨大なお城じゃない……」
小紋は、つぶらな瞳をことさらひたすらぱちくりして、前方のモニターに食い入る。
このレア物と噂される浮遊戦艦は、その見た目とは裏腹に高速移動が可能である。今までに人類が築いてきた、いかなる巨大建造物ですら及びもつかないそのフォルムと巨大さ。そして、いかな円錐形の物体であろうとも、地球の重力や空気抵抗にも対抗し得る出力と科学技術力。
それだけを見て取ったとしても、この円錐形の浮遊戦艦が今までの時代の物を超越していることを証明している。
「さあ、ここからが勝負だよ、僕……。この新型の浮遊戦艦には、これといったデータなんかない。だから、どこに侵入口があるかなんてさっぱりわからない状態だし。でも、それでも僕はやらなきゃならないんだよ!!」
言うや、小紋は迅雷五型改の背部から折り畳み式の大型の羽根をせり出させた。
この背部からせり出した四枚の羽根により、迅雷五型改は二分間だけ自由飛行が出来るようになる。六基からなるスロットホバーノズルの加減と方向展開によって、その動きを可能にすることが出来る。
しかし、二分近くも経てばタービン型の起動装置は一度ヒートダウンをしなければならず、その関係上、飛び立った二分後には再びどこかに着地しなければならない。
「ナルコザワリーダー。前方ヨリ、敵勢力出現。コレヨリ、本機体ハ、戦闘モードに移行シマス……」
「了解したよ、〝
「ハイ、ワカリマシタ。ソレデハコレヨリ、各種兵力装備ノ、セーフティロックを解除シマス。近接戦闘モードオン……。ロックワインドミサイル解除オン……」
小紋は、迅雷五型改の性能に不満を抱いてはいなかった。が、その機体に埋め込まれたユニットである人工知能に不安を隠せていなかった。
(これが不思議なんだよね。この地球上では、僕が
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