浮遊戦艦の中で62


 小紋の頭の中は、一瞬にしてぐちゃぐちゃになった。

 彼女の作戦行動の目的は、あの浮遊戦艦に囚われた人々の奪還にある。あわよくば、その救出過程によって浮遊戦艦の未知なる情報を引き出し、そして行く行くは浮遊戦艦を破壊し、以前のような世界秩序を取り戻すことが組織としての最終目的である。

 しかし、突然の巨大生物の襲来――。

 これは小紋ならずとも、余りにも意外な展開である。

「ま、まだ……まだ、凶獣ヴェロンが街を襲ってくるというのなら理解出来るよ……。だけど、まさかこんな大きな猫ちゃんが、僕らの街を壊しちゃうなんて……」

 小紋は唖然として、送られてきた通信映像を見つめていた。

 そこに、

「鳴子沢リーダー!! 大変なことになりましたな」

 と、シュミッター元大佐が慌てふためき加減で通信を入れてくる。

「大佐! シュミッター元大佐! こんなことって……!?」

「ええ、鳴子沢リーダー。これは敵方に先手を取られましたな」

「先手? 先手ですって?」

「ええ。これは多分、浮遊戦艦側が仕掛けてきた何らかの作戦に違いありません。この現象についての確かな証拠などはありませんが、この状況と敵方の目的から察すれば、これは浮遊戦艦側が意図的に仕掛けてきた攻撃であると推察されます」

「浮遊戦艦側が仕掛けてきた……ですって?」

「ええ、そうです。これでとうとう浮遊戦艦側は、我々人類に対し、真の意味での攻撃を仕掛けてきたということになります。今までは、人々の拉致や拿捕によって、我々人類の特性を知り、観察を続けていたのだと考えられました。それが、今回になってこの行動……。これは正しく真の意味での攻撃の始まりと見て良いのかと……」

「そ、そんな……。僕たちは、まだ何も取り戻せていない、何も目的を達成出来ていないというのに……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る