浮遊戦艦の中で60
彼ら南雲部隊は、一様に小紋に向かって敬礼をすると、それぞれがそれぞれの決まった編成によって出撃を開始した。
小紋ら抵抗組織〝シンク・バイ・ユアセルフ〟の中枢本部は、現在の横浜港にほど近い、元々アメリカ軍の駐屯基地のある湾岸地域に居を構えている。
そんな引き込み線と企業の大型倉庫跡をベースに、彼らは海岸線での防御戦線を張っているのである。
小紋の駆る【迅雷五型改】にしろ、南雲部隊七名の駆る【
この両機体は、地球の地上、そして海上戦闘を想定して製作された人型機動兵器であり、その用途は、敵勢力の揚陸阻止と駆逐迎撃にある。
地上では、計六基からなるタービン型高出力ホバー走行によって、高速度の機動性を有し、さらに、ハイドロスライダーと呼ばれる三点型のアダプターを装着することによって、水上での高速度運用までも実現している。
小紋は、南雲部隊が出撃したことを確認するや、
「迅雷五型改、鳴子沢小紋出ます!!」
「了解いたしました、鳴子沢リーダー。現在、海岸線前方五キロ圏内はオールクリアです。迅雷五型改、直ちに発進してください」
作戦室オペレーターのフェリシア中尉の優しく落ち着いた声がコックピットに響き渡る。
「前方五キロ圏内オールクリア、了解です、フェリシア中尉。それでは迅雷五型改、発進します!!」
小紋は出撃の掛け声とともに、右足のスロットルを思い切り踏み込んだ。
すると、小紋の視界は唐突に歪む。白みがかった視界が大きく開け、やがて目が慣れてレール走行のトンネルから地上の排出口に達した時、迅雷五型改は晴天の光にさらされ、一瞬にしてその機体の重みで穏やかに煌めく海面に放射状の波しぶきを上げて水着するのであった。
「発進カテゴリー、オールグリーン。これより、僕と南雲部隊七名は、羽田沖に出現した浮遊戦艦に接近、揺動を掛けます。フェリシア中尉、僕たちが目的地点に着くまで、逐一現状を報告してください」
「了解いたしました、鳴子沢リーダー。現在、東京湾岸支部からの報告によりますと、浮遊戦艦は羽田沖陸上より十五キロほどの地点で滞留しているのとのことです」
「滞留している? それ以外に何か動きは?」
「いいえ、まだそれ以外に何も……。い、いえ、たった今新しい通信報告が入りました。え? でもこれは……!?」
「何、フェリシア中尉!? 何があったの!?」
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