浮遊戦艦の中で56
突進する巨大子猫を制することも出来ず、正太郎は慌てふためくばかり。だが、巨大子猫はその勢いを緩めることなく郊外の住宅地へと瞬く間に辿り着こうとしていた。
「や、やべえ!! 早く止めねえと、死人が出ちまう!!」
正太郎が叫ぶのと同時に、
(その通りよ、ショウタロウ・ハザマ!!)
エナが、直接正太郎の頭の中に話し掛けてきた。
「何だ、エナか!? 何がその通りなんだ!?」
(何がって、今あなたが言った通りの事よ!)
エナは、かなり焦っている様子である。
「俺が今言った? それってもしかして、死人が出ちまうって話か?」
(そうよ、それよ! このまま巨大子猫がそこに突っ込んじゃえば、数え切れない死傷者が出ちゃうってこと! だから、早くそこは何とかして!!)
「何とかしてって言ったってよう! それにここは〝偽りの世界〟の中なんだから、死人が出るっつったって、そんなに問題はねえわけなんだろう?」
(いや、それが違うのよ。いくらここが〝偽りの世界〟の中だって言ったって、本体がどこかで眠っている人に限っては、本当に死んじゃう可能性があるの!)
「何だと!? そりゃあ、どういうこったい!?」
(うん。つまりね、前にも言った通り、ここの世界に生きている人たちの約半数以上は、ここに囚われた人たちの相互的な記憶によって、現実に存在したことのある人物を、あたかも本当にここに居るように登場させている。だけど、ここに囚われている人たちはその限りではないわ。ここに囚われている人たちがこの状況で死んでしまえば、そこに繋がっている本体にまで精神が影響して、ショック死を起こしてしまう可能性が高いのよ!)
「ぬわにぃ!! 何で今さらになってそんな大事なこと言ってくるんだ!? するってえと、このままコイツが住宅街に突っ込んじまえば、浮遊戦艦に囚われた連中の大多数に被害が及ぶってわけか!?」
正太郎はゾッとせざるを得なかった。
この浮遊戦艦に囚われた人々は、永遠に苦しみも悲しみもないという甘言に誘われてここに乗り込んできたのだ。
しかしその実、この世界の中では恒久的な困難という苦しみのモルモットにされ、そしてそれさえ乗り切れなければ簡単に命を落としてしまうという窮地に立たされている。
「ふざけんじゃねえ!! こんな馬鹿な話ってあるか!! もう
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