浮遊戦艦の中で53
正太郎は、思わず照準器を覗き込んだまま動けなくなってしまった。
何と、その照準器の向こう側に映るもの。それは、巨大なスタジアムを遥かに凌駕するほどの大きさもある何とも可愛らしい三毛猫の姿だったのだ。
「し、しかも……ありゃあ、どう見たってまだ
可愛いは正義という言葉があるが、人の心が正常である以上、まだ完全に未成熟で愛らしい生物の姿はその完全なる対象である。
この世に生きる生物のそのほとんどは、一人前の成長を遂げるまでは身を守る
ゆえに、そのような対象を、
『ああ、なんて可愛いんだ!!』
と相手が判断する。大人は本能として守らなければならない対象として認識してしまう。可愛いというのは、守られるべき対象と判断してしまう証左なのだ。
何と言っても、羽間正太郎は元から父性本能の強い男である。それだけに、どんなに尋常でない大きさの対象であろうと、相手がこれでは戦う意欲さえ失ってしまう。
「しかも、ご丁寧に頭にあんなにごつい怪獣の着ぐるみみてえな被り物なんかかぶせやがって……。逆に可愛さ百倍だぜ。さっき俺が遠目で確認したのは、アレの先っぽだったのか……」
その巨大な三毛の子猫の頭には、どこかで見たことのある〝怪獣〟の頭部を模した冠のようなものが被せられている。
「あざといにも程があるぜ……。ここを司っている巨大人工知能ってのは、こんなことまで学習していやがったんだな!」
正太郎が冷や汗を流しつつ、その場で巨大子猫を見上げていると、
「どわっ!! 何しやがるんだ!?」
巨大子猫が正太郎の存在に気づき、獲物を狩るようにいきなり飛び掛かって来た。
巨大子猫と言っても、相手は飛び切り遊び盛りのやんちゃな生き物である。巨大子猫は、見るからに嬉しそうに喉を鳴らしながら、瓦礫崩れる残骸を掻き分けて突進して来たのである。
「うわっ、こっち来んな!! いや、どっちかつうと来て欲しいけど、やっぱこっち来んな!!」
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