浮遊戦艦の中で51


「分かったわ。じゃあ、今すぐありったけ強力な物を用意するから、ここは全部あなたにお任せするわ!」

 エナは言うや、慌てて両腕を何度も振りかざして、頭に思い浮かんだだけの銃火器類を出現させる。

 そこには、マシンガンやアサルトライフル、バズーカ砲と言ったお馴染みの物だけでなく、備え付け型のガトリングガンや手持ちのミサイルランチャーまでもが用意されている。

 その武器類の上に、巨大な怪獣が歩む地響きによって瓦礫の屑がパラパラと降り注いでくる。

 当然、巨大怪獣の歩み寄る距離は刻一刻と迫りつつある。それを待ち受ける正太郎たち側からも、巨大怪獣の黒々とした岩山のようなでこぼこした頭が確認出来るぐらいだ。 

 そこで正太郎は、

「おいエナ! この俺が注文したレーザーソードが出てねえぞ!」

 彼は、脂汗を拭いながらエナに向かって叫ぶ。それに呼応して、

「あ、ゴメン。忘れてた。でも、あんな大きな怪獣相手に、白兵戦用の近接武器なんて……」

 エナも焦りを隠し切れずに、ぺろりと小さな舌を出して見せる。

「いいから、はよ出してくれ! 俺にとって近接武器は生命線も同然なんだ。ああ……それとあと、超振動式の特殊警棒デュアルスティックも忘れずに出しといてくれ!!」

「ええっ!? そんな前時代的な武器まで!?」

「いいんだよ! 俺にはあれが使い易いんだ。なんてったって、ありゃあ俺の修業時代のメイン武器なんだからな」

「うん、分かったわ。じゃあそうする」

 言われてエナは、正太郎の注文通りになるべく軽くて丈夫そうな特殊警棒デュアルスティックのリストをアーカイブの中から探り当て、それを具現化させる。

「おう、これこれ。さすがはエナだ。お前、なかなかセンスが良いぜ。このケルベロス・タッグス社製の特殊警棒デュアルスティックを選ぶなんてな。こりゃあ、あの時代でも特に名高い名品なんだぜ」

「そ、それはお褒めいただいてありがとう……。だけど、そんな物で……」

「いいんだよ。これは俺にとってのお守りみてえなもんだ。使う機会がなくったって、これがあれば心強えってなもんだ」

「ふうん、そういうものなの……」

 エナが目をぱちくりして正太郎の背中を見つめていると、

「それで、プロテクトの再構築にはどのぐれえ掛かる!?」

 正太郎は唐突に振り返って問い質してきた。

「そ、そうね……プロテクトの再構築には多分……10分ちょっとは掛かっちゃうと思う。だから、それまでなんとか頑張って!!」

「10分ちょっとだと!? ええい……分かった、了解した。何とか持ちこたえて見せるから、そっちの事は頼んだぞ!!」

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