浮遊戦艦の中で㉟
「羽間さんが……ですか、少佐!? でも、いくら羽間さんが頼りになる人だからって、このミリタリーバランスではどうにかなるって話では……」
小紋の本当の胸中は、シュミッター元大佐と同じであった。しかし、元大佐の言わんとしていることとは少しばかり違う。そう、単に彼女は正太郎のそばに居たいだけなのだ。
「いえいえ、鳴子沢リーダー。そうではありまんよ。彼は確かに先の戦乱で実績を上げた、言わば反乱軍に無くてはならない存在でした。しかし、彼の存在価値はそれだけではない――」
「それだけではない? それだけではないって、どういう意味ですか、大佐?」
「そう、これは私の憶測でしかありませんが、今現在あなたが彼に期待していることと同じことですよ」
「同じ事って、そ、それって……」
「ええ、皆まで言わねども、そのお心はリーダーの顔に書いておいでです。そう、ミスターハザマ。彼があの戦乱の時、その場、その戦場に居るだけで誰しもの表情が変わったのです。力強く笑みを浮かべる者もあれば、武者震いを起こす者も居る。落ち着き集中を取り戻す者も居れば、彼に向かって愚痴をこぼし出す者も居る。中にはあまりの緊張に何度もトイレに駆け込む者もおりましたが、やがてそ奴は何か吹っ切れたように緊張が解かれ、リラックスした表情で作戦行動開始を待つこともあった。皆、彼にそういう役目を求めていたのですな」
「そ、そうなんですか……」
「ええ、そうなんですよ、鳴子沢リーダー。あなたのお師匠というお方はね、あの当時――ミスターハザマはまだ若かったが――周りに与える良い意味での影響と言う観念では打ってつけの存在だったのです。何を隠そう、この私めも彼のそういった雰囲気に助けられた一人でしたから……」
「大佐が? 大佐ご自身が?」
「ええ。確かに私は彼よりもかなり年齢が上で、しかも軍に属していた経験年数もかなり長い。しかし、人と言うものはそれだけで価値の決まるものではありません。確かに実績も大事ですが、やはりそれなりに周りの人々に与える影響というものが、このような集団を束ねる時に大切な要素になって来るものです」
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