浮遊戦艦の中で⑱


「そうよ、あたしがどんなに苦労してあなたを探し出したか分かって? 丸々三年は掛ったのよ、あなたの意識体を探し出すのに!!」

「意識体だと!? なんじゃそりゃあ!! じゃ、やっぱお前の正体はなのか!?」

「何言ってるの? あたしはそんなオカルトめいた話をしたくてそう言っているんじゃないの!! 意識体というのはね、あなたの現在進行形でこの空間に彷徨っている意識のことを言うのよ!!」

「はあ? じゃあ、やっぱその話ってそれっぽいことを意味するんだろ?」

「だから違うって言っているでしょ!! そうじゃなくって、あなたが感じているこの空間自体が本当はなの!! あなたたち浮遊戦艦に囚われた人たちの過去の記憶から編み出された世界なのよう!!」

「浮遊戦艦? 過去の世界? 何言ってんだお前……。やっぱお前は過去に悲しい記憶とともに葬り去られた少女のなのか?」

「だからぁ、あたしはじゃあないんだってばぁ!! 何度言わせれば気が済むのよう!! もう、出会ったときのあなたと違って、若い時のあなたは少しばかり頭が固いようね」

「何言ってるんだ! 俺ァこれでも混乱してるんだぜ! いきなりお前のような女の子が現れたかと思えば、そんでもってまたいきなり腹を思いきり蹴られたりして。そんでもって意識体だとか浮遊戦艦だとか訳の分からねえこと並びたてられれば、気持ちの整理が出来ねえのも仕方ねえだろ!」

「ふん、なるほどね。やっぱり男の人って、経験が物を言うようね。この後、あなたは色々な経験を積むわ。あたしはその何年も後のあなたと出会うことになるんだけど、先にそれを知っちゃったから、やっぱりちょっとだけ青臭くて魅力に欠けるわね。……ん? 待てよ。ということはもしかして、あたしってオジコンなのかしら……」

「オジコン? 何言ってんだ、この金髪小娘が。こっちは先を急いでいるんだ。俺ァ、ミリィとフェルとナーニャを早く迎えに行かなくちゃならねえんだ。化けて出るんなら後にしてくんな。こちとら忙しいんだからよう」

 正太郎は言うと、立ち上がってホコリくずを払い、身だしなみを整える。

 すると、

「ねえ、ショウタロウ・ハザマ。行くってどこへ?」

「そりゃあ決まってんだろ。猿渡商店街にある【穂乃果倶楽部】へさ。そこに彼女たちが仕事を終えて待ってるんだからよう」

「ああ、そうね。でも、それは行っても無駄よ」

「な、何!? 行っても無駄だと!? お前、の分際で何言ってやがる!!」

「だからぁ、あたしはあなたの言うじゃないって何べんも言っているでしょう!! そ、それに……」

「それに? それに何だ?」

「うん。それにね、もうあなたがそこに行こうとしても、彼女たちにはもう会えないからよ」

「な、何だと!?」


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