フォール・アシッド・オー74
「そ、そんなあ……! 人が沢山死んじゃえば、悲しい気持ちになるのは当たり前じゃない!?」
小紋が激しく首を振って問い返すが、
「ああ、そうだとも。お前のいう通りだ。しかし、こうは考えられんか? まあ、ある一定層の感情の乏しい人々は例外としても、大多数の人間は、人が沢山死んでしまえば悲しいと感じるのが通常の感情だと言ってよい。だが、果たして自然はそう思うだろうか? 自然というシステムは我々人間が大勢死んで何を感じるものだろうか? いや、実際にはそうではないだろう。自然というものは、自然を永続的に循環させることが自然の
春馬は、その言動がさも当然といった具合で言い切った。
すると、
「春馬兄さん、言っている意味が良くわからないんだけど……」
小紋はきょとんとした眼差しで春馬を見返している。
「ふむ。そうか、この私の言っている言葉の意味が分からんか……。しかし、お前よくそれで、あのヴェルデムンドの背骨折りの一番弟子だなどと言っていられるものだな。あの羽間正太郎という男――。あの男こそが、その理論を推奨して反乱を起こした首謀者だと言っても過言ではないのだぞ!」
「は、羽間さんが!?」
小紋は、大きな瞳をぱちくりして春馬を見やると、
「ああ、そうだ。よいか小紋。あの教団の根城に体当たりして命を落としたヴェロンの亡骸をよく見るのだ。あの者たちは自然の均衡を守る神的存在なのだ。そして、あの教団のように機械の力を借りて驕り高ぶった者どもを一掃しようとしたのだ。しかして、お前の師匠でもある羽間正太郎という男もあの凶獣と呼ばれたヴェロンと存在意義は同じ。世界の均衡を図るために自然が生み出した絶対的なキーマンということになるなのだ!」
「羽間さんが、絶対的なキーマン?」
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