フォール・アシッド・オー60


 

「デュバラさん!! クリスさんの容体は!?」

 小紋が慌てて駆け寄り、クリスティーナを静かに抱きかかえると、

「この様子だと、あの二分の一のサムライという人にまだ何か秘密があるみたいだね。ということは、それを知らなくちゃあの人を倒せないってことだよね?」

 小紋は、内心はらわたが煮えくり返るほど憤りを覚えていた。なぜなら、彼女にとっての羽間正太郎という男は、この世の中で一番尊敬に値する対象だからである。

 そんな彼に似せた存在が、まるで化け物のように身体全体を分離させたり、本物とはまるで正反対の邪念を抱いていることが全く許せないのだ。

「小紋殿!! 焦りは禁物だぞ。確かに俺も小紋殿が抱く気持ちは分かる。だが、それではいかにも相手の思う壺だ。ペースを取り乱したままでは、奴の力に太刀打ちできぬ」

 言うが、デュバラの腕が怒りで打ち震えてる。クリスティーナに大事こそなかったが、彼女に万が一のことがあれば、彼とて冷静ではいられなくなる。

「しかし、一体……!? クリスは奴の身体の中に、何を見たというのだ!?」

 と言うやその刹那、突然デュバラの目前に赤い砲弾が走る。それはおおよそ二十ミリ程度の銃弾とも言えるもので、その銃弾が真っ赤な火を放ちながらデュバラに向かってきたのだ。

「おうっ!!」

 デュバラはクリスティーナを抱えつつも、寸でのところでそれをけた。常人ではこなすことのできぬ早わざである。

「デュバラさん、大丈夫!?」

 小紋が悲鳴のようなトーンで声をかけると、

「だ、大丈夫だ、小紋殿!! し、しかし――!!」

 またもや赤い火を放つ小さな砲弾がデュバラを襲った。

 

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