フォール・アシッド・オー58


「この腐れ外道め!! 貴様のような奴がいるからこの世に争いが収まらぬ!! 貴様のような奴がいるから勘違いした支配層が次から次へと湧いて出る!! 良いか、俺たちは生物だ、正真正銘の生身の生き物なのだ!! その生き物を苦も無く機械なんぞ変えたとて、その中身が変わらなければそれは屑鉄も同然!! 俺たち人類は生物なのだ。貴様らのような頭でっかちで目の前の物事すら認識できぬ輩どもは、視野が狭すぎてそんな簡単なことにすら一つも気づかぬのだ。そのような幼稚な目を持った節穴どもに俺たちは負けたりなどせぬぞ!! それが俺たち、羽間正太郎を始めとしたネイチャーとしての誇りなのだからな!!」

 デュバラは言うや二分の一のサムライに向かい、円月輪を次々と撃ち放った。撃ち放たれた円月輪は、それぞれに二分の一のサムライの頭部、胴、腕、足、そして大剣に飛燕のような軌道を描く。

 だが、

「またそれか!? だから生身にこだわる奴らは馬鹿だって言うんだよ!! ついさっきけられた技をまたかましてくるなんざ、テメエらこそ節穴だろうが!! 俺たちこそテメエら人類を超えたスーパー超人類なんだよ!!」

 二分の一のサムライは瞬時に身体をバラバラに分離させた。すると、四方から迫り来る円月輪が、まるで実体の無い身体をすり抜けるかのように通り過ぎてゆく。

「馬鹿じゃねえのか、テメエは!! そんな腕でこの俺に傷一つ付けることは出来ねえぜ!!」

 したり顔で再び身体を再構築する二分の一のサムライ。その表情には焦りどころか、恐怖の色さえうかがえない。しかし――

「ほう、果たしてそうかな? 二分の一のサムライよ。貴様、よく自分の身体を確かめるのだな」

「な、何っ!?」

 デュバラに諭されてぎろりと彼は身体をまさぐるや、

「む……!?」

 何とも言えぬ表情で右ひじをつかむ。すると、何と腕と二の腕の接合部に何やら細長い棒状のものが突き刺さっているでないか!

「こ、これは……!! あの女の苦無くない!!」

 苦無――。それは忍術の心得を持つクリスティーナが愛用する手持ち武器である。その鋭く磨かれた投げ苦無が、二分の一のサムライの肘の結合部に深く撃ち抜かれている。

「ば、馬鹿な!! いつの間に……!?」






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