不毛の街⑯


「何だ、小紋? 私が何か可笑しいことを言ったか?」 

 真剣な眼差しで問うてくる春馬。

 そんな彼に、小紋は乾いたため息混じりの口調で、

「そりゃあそうだよ、春馬兄さん。だって、みんなあのウィルスに感染して後遺症を起こした人たちは、それなりに見栄えを取り繕うように身体を機械に換えて行ったんだよ? それなのに、そういったつるつるの頭で巷をうろちょろしているってことは、そうであるか無いかにかかわらず、自分が〝ネイチャー原理主義者〟です!! って体で表現しているようなものなんだよ!?」

「な、なぬっ!? そ、そ、そそそ、そうなのか!? 確かに言われて見ればそう受けとられても仕方が無いような気がする……。何だかそう言われると、身に覚えに当たる節がいくつかあるな……。最近というか、ここ一、二年の間に、調査の最中に何度もいわれの無い難癖をつけられらり、派手な格好をしたサイボーク集団にからまれてしまったり、とな……」

 春馬は眉間にしわを寄せ、口元をへの字にしながら天を仰ぐ。

「もうっ、だからやっぱり春馬兄さんは春馬兄さんなんだよね。よくそんなんでここまで五体満足に生きて来れたものだよ。普通、そんな考え方で裏道を歩こうものなら、とうの昔に過激な考え方の集団の餌食になっちゃうものなんだからね!!」

「ふむ。今、お前の話を聞いて、私にも今さらながら鳥肌が立ってしようが無くなってきた。手の震えが止まらん……」

 どうやら春馬の言葉には、嘘偽りが無いようだ。針金のような細くて長い脚がガクガクと音でも立てたように震えている。

「それにしても、春馬さんて、本当に出鱈目な感覚の人なのね。よくそれで探偵なんかやっていられるわ」

 横で話を聞いていたクリスティーナも溜息が止まらない。

「それでさあ、春馬兄さん。早く教えてよ。そのとっておきの情報ってやつ。このままじゃ、兄さんのポンコツ話で終わっちゃう……」

「ポ、ポンコツとは何だ、ポンコツとは!! 私はこれでも真剣なんだぞ!! いいいか小紋!? お前はあの世界に帰りたくないのか!? あの凶暴で野蛮かもしれんが、自然と希望と命溢れるヴェルデムンドの世界へ!!」

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