楽園へのドア⑱
「かなちょろの……。てめえは最初っからこれが狙いだったんだな……」
かなちょろのエリックの功績は大きい。何せ、あれだけ無敵を誇る
(そうだな、かなちょろの。お前の言わんとしていることが手に取るように解かるぜ。奴らは、デメリットを隠すために強烈なメリットの印象を俺たちに見せつけたと言うわけだな。てえことはよ、かなちょろの……。そんな大欠陥のある融合種とタッグを組んだアンドロイドの連中にだって、何か付け入る隙があるって話でいいんだな……)
一つ一つでは何の意味も成さぬ情報を、正しく連結させて情報を読み解くのも軍師の役目である。諜報員には、スパイマスターなるまとめ役が居るものだが、かなちょろのエリックという男は、その役目を羽間正太郎に期待したのだ。この情報を託すために死んで行ったのだ。
「ああ、分かったぜ、かなちょろの……。いいや、エリック・エヴァンスキー。お前は、この俺にまだ反骨の力が残っていることを見抜いていたんだな。それでこの俺がこの血みどろの文章を見つけて読み解くことを確信していたんだな。ありがとよ、ホント礼を言うぜ……。お前のような男が居なければ、俺だけじゃねえ。ここに居る沢山の連中が奴らの術中に嵌まっちまうところだったぜ。この恩に報いるには、この俺がお前の意思を引き継ぐしかねえってこった……」
正太郎の闘志がさらに燃え上がる。
正太郎の当初の考え通り、相手がこのような手を使用してくる限り、あの演説自体が〝まやかし〟である可能性が高いことはまごうかたなき事実。であるならば、断然、正太郎はこのまま目的に向かって突き進むのが妥当であると考えてよい。
(しかし、あの演説自体が小紋の声である以上、敵側に小紋が居る可能性は否定できない。だが、それを確かめるには、この俺が敵地に足を踏み入れて確認するしかねえってもんだ。でももし、そうだったとしたら……)
もしそうだとすれば、鳴子沢小紋が敵の手に堕ち、洗脳ないし、改造手術を受けてしまっている可能性も無きにしも非ず。それがゆえに、今後の計画が彼の泣き所となってしまう。
「核となる要所の人物の弱い部分に付け入るなんざ、まるで背骨折りと呼ばれたこの俺をまるで意識して煽っているかのようだぜ。まったくせこい作戦だな。だがよ、なかなかそりゃあ、堂に入ってるってもんだ。なにせ、もうボディブローみてえに、この俺の心の奥底にジワジワと効いて来ていやがるんだからな……」
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