楽園へのドア⑥
確かにこの一連の動きは、目の当たりにした乗員らに衝撃を与え得るに十分なものがある。
どこまでが演出であり、どこまでが実際の成り行きであったかは定かではない。が、しかし、これほどまでに人の信頼を
「しかし待て、かなちょろの。この車両は浮遊戦艦行きだ。つまり、アンドロイドやサイボーグの国に誘引するための物のはずだ。なのに何であの組織がこれに関わっている?」
正太郎は冷や汗を滴り落としつつ問う。すると、
「そりゃあ決まっておりやすがね。ついぞ最近、組んじまったんですよ。機械の国とハイブリッターの組織とがね」
「なんだと?」
正太郎はまたしても目を見開く。
「そんなに驚きなさんな、墓石売りのダンナ。あちらの世界はもうそういった風潮なんですよ。いや、もうダンナが御存じの地球ではないので御座いやすよ……」
「む、むう……!!」
正太郎はまたしても言葉を失った。
彼らの乗り合わせる輸送車両は、巨木の森の中をそのまま走り続けた。
あれだけ騒ぎのあった車内は、また元の楽園の様相に様変わりし、人々はさらにまだ見ぬ楽園への興奮に身を投じ続けている。
(それにしても、この流れと言い、エリックの掴んでいる情報と言い、俺の知らねえことばかりだ。もう今までの常識は通用しねえってのはこういうことなのか……)
正太郎はシートに深々と体を預けたまま考え込んでいた。
彼は少し前に、
「なぜ、お前がそんな貴重な情報を知っている?」
と、かなちょろのエリックに問い掛けたが、
「それは今は言えやせんぜ、墓石売りのダンナ。流石にこちらにも事情は御座いやすのでね」
と、また不敵な笑みを浮かべられ、上手くはぐらかされてしまった。
これならば、情報将校の草壁中佐の部下を乗り込ませても良かったのではないかと後悔の念さえ漂う。
しかし、彼とて同じこと。かなちょろのエリックに自分の本心を打ち明けて潜入していないのであれば、これもまた同等の立場である。
そうこう考えながらうとうとしていると、夜もとっぷりと
彼らはそれぞれに持ち寄った食料を口にしたり、イヤホンで音楽を楽しんだりしている。それぞれがそれぞれにこの先にある楽園に期待を寄せている。すると、
「おい、あれを見ろ!」
一人の男の大声が上がった。乗員は皆がハッとし、偏光シェードの向こう側に見える光る物に目を向けた。
「あ、あれは浮遊戦艦だ!!」
「まあ、なんて大きさなのかしら!!」
「まるで光り輝くパラダイスのようだ!」
「あれが私たちの夢見る楽園へのドアなのね!!」
なんと、延々と続く巨木の森の向こうに、煌々と光輝き山のようにそびえる巨大戦艦が浮遊していたのだ。
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