神々の旗印235
いくら複数人で取り囲もうとも、百戦錬磨たる正太郎を組み伏せるのは容易な事ではない。しかも、いくら軍属とは言え、七尾大尉は老齢で生粋の整備畑の人である。だが……
「どうしてもここを通りたければかかって参られい、少佐殿!」
気合十分と言った気迫を醸し出し、正太郎を焚きつけた!
「応!!」
それに呼応し、正太郎は目にも止まらぬ速さで手刀を繰り出した。その刹那――
「おうっ……!!」
正太郎は情けない声を上げたかと思うと途端に体全体のバランスを崩し、見事前のめりにけ躓いて顔面を冷たい床に強打する。
七尾大尉はそんな彼の姿を見計らったと同時に、
「それ、皆の者! 今だ! ここで少佐殿を取り押さえるのだ!!」
と号令をかける。
流石は女王直属部隊の警備兵である。彼らは正太郎の一瞬の隙を見逃さず、機敏で統制の取れた動きで簡単に彼を取り押さえてしまった。
「う、うぐぐぐ……」
後ろ手に電子錠を掛けられ、身動きが出来ない正太郎は唸り声を上げるしかない。
そこで七尾大尉が彼の傍に歩み寄り、
「だからわたしは言ったのです。今のあなた様は
彼はそう言って、手にした物を正太郎に差し出した。
「そ、それは……整備班が使う専用の電子ワイヤー……」
「ええ、いかにも……。わたしは少佐殿の身体に取り付いた一瞬の隙に、あなた様のズボンの裾にこれを仕掛けました。あなた様はそれに微塵も気付かずに前だけを向いてここを乗り切ろうとしたのです。そんな今のあなた様に難敵に立ち向かえる秘策が生み出せますでしょうや? 否、わたしにはとてもそうは思いませぬ。今のあなた様は、この老いぼれのこんなありふれた小細工すら見破れぬほど視界が狭まっておるのです……」
「クッ……!!」
正太郎は全く言葉を返せなかった。恥ずかしさだとか、敗北感だとか、情けなさだとかそんな上っ面な感情すら湧かず、ただ頭の中がひたすら真っ白になった。
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