神々の旗印181

「せ、背骨折りさん。オラたちにとって、背骨折りさんの目的としていることはその後のことなんだすです。家族を守ってからやるべきことなんだすです」

 兄弟たちは、薄っすらと目に光る物を浮かべていた。

「解かってるさ。お前らこの俺を誰だと思ってんだい。あの厳しかった戦乱で斬った張ったの大活躍をしまくったヴェルデムンドの背骨折り様だぜ? そんなお前らの心中ぐらい察することが出来なくてどうするよ?」

「背骨折り……」

「背骨折りさん……」

 マドセード、エセンシス。彼らとて、決して正太郎の意思に背きたいわけではなかった。しかし、彼らには彼らにとって優先的に守るべきものがある。

 正太郎には彼らの気持ちが痛いほど伝わっていた。これが他の命を背負って立つ男たちの本音なのだと。

 常に理想と現実の狭間を邁進し、激しい戦いと冒険にその身を興じて来た正太郎である。それこそが彼が生きてきた証しだと言える。

 しかし、それは一般的な人びとには到底叶うことのない浪漫溢れる類いのものでしかない。

「ああ、分かってるさ、マドセード、エセンシス。それでいい。それでいいんだよ……。それがお前らが自分で決めた役目なんだからな。それは誰かに言われてやるもんじゃねえ。他人にとやかく言われて従うもんじゃねえ。自分で選んでそしてそれに全力を尽くしていくことこそが昔からの俺たちの理想。そしてそれが、あの戦争の真の意味合いだったんだからな……」

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