神々の旗印182


 正太郎はのちに、これが時代の分岐点なのだと嫌というほど知らされることになる。

 戦士としてかなり優秀だったイーアンの死。そしてその相棒、人工知能マーキュリーの離脱。さらにマドセード、エセンシス兄弟との別れがどれだけ彼の今後の人生を苦しめることになろうとは……。

 

 空はまだ遠くの方で地鳴りのような響きが木霊こだましている。恐らくまだ、猛り狂った勇斗と、それを何とかいさめようと躍起になっている早雲の意地の張り合いが続いているのであろう。

 その天変地異とも終末の黙示録とも判断のつかない攻撃のやり合いによって、このヴェルデムンドの大地はさらに荒廃の一途を辿って行った。

 そして、その二人の意地と意地とのぶつかり合いがあった直後に、また先程と同じように遥か彼方遠くの空の向こうから得体の知れない核ミサイルが飛んで来ては不気味な閃光によって彼らの大地を焼き尽くして行くのだ。

 それを傍からうかがっていた正太郎らは思わざるを得なかった。これは間違い無い。あの地球からの核攻撃は、ヴェルデムンドからの不都合な何かを回避するための物なのだ。そして、今現在の地球は、ヴェルデムンドからの何らかの脅威によって危険に晒されているのだと――。

 そうと大方の予測も付けば、こうして呑気に滅亡の花火大会を見物している場合ではない。と、正太郎はその確信を胸にその場を颯爽と立ち上がる。

「背骨折り! どこに……!?」

「背骨折りさん! どこに行くだすですか!? まだ外は危険だから、この巨人の下の洞穴に隠れていた方が良いだすですよ!」

「おいおい、この俺がそんなにのんびりしてられるかってんだい! そんなこっちゃ、一時間後にも俺たちは腰の曲がった爺さんになっちまうぜ!?」

「だって、背骨折り! 今外に出て行ったら……」

「背骨折りさん、外には見えない危険がいっぱいなんだすですよ! それにまだ、いつ核ミサイルが空から降って来るのか分からないのに……。どうしてどこに行くのだと言うのだすですか!?」

「決まってんだろ、エセンシス! 今から俺の無二の相棒を掘り起こしに行くのよ! 何せさっきの爆風で奴は丸ごと埋まっちまったからな!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る