神々の旗印166
その正太郎のその展望は間違いではなかった。これは彼ら人類にとって、右に転ぶか左に転ぶか、はたまた上に登るか下に転げ落ちるかを測る意味でも大事な戦いである。
(これは、優れた方が勝つとか負けるとか、そんな単純なものじゃねえ。今後俺たちがどうこの世界で生き残って行くのかを想起させる一戦なんだ……)
正太郎が、自由の効かぬ体を寝転ばせながら喉をゴクリと鳴らす。
するとその瞬間、なんと! 予想外にも先手とばかりに攻撃を仕掛けたのは美少女早雲の方であった。
「なんだと!? 勇斗の出方も見ずに仕掛けるだと!?」
正太郎が驚くのも無理はない。何せ彼女は人工知能なのだ。人工知能は創造力の無いところが欠点である。それゆえ、まだ相手のデータもままならない状況で攻撃を仕掛けるということは、一般常識から言えば無策無謀の一点突破である可能性が高い。
しかし、早雲はそんな彼の危惧などをよそに突風のような身のこなしで勇斗の懐に飛び込むと、
「ええぃっ!! 隙あり!!」
と、その小柄な体をその場で一回転させ右足を勇斗の
勇斗の体は反動で、背骨ごとくの字に折曲がりその場にドスンと膝をつく。
「ぐ、ぐへえ……!!」
勇斗は途端に息が出来なくなり、たまらずそこで嗚咽をしながら吐しゃ物を垂れ流した。
しかし早雲の攻撃は留まる事を知らない。息の詰まった勇斗の様子を見計らうや、彼女は勇斗の背後に回り、側頭部から生えている角を両腕で掴んで、
「ええいやぁっ!!」
と、奇声にも似た掛け声とともにバックドロップを仕掛ける。すると勇斗の体はつま先が物凄い勢いで弧を描いたかと思うと、そのまま脳天が垂直軌道で突き刺さった。
「や、やったあ……」
正太郎は思わず感嘆の言葉を漏らした。彼女の全く容赦ない攻撃に、身の毛がよだつほどである。
どこで彼女はこんな格闘技の芸当を覚えたのだろう。そう感心してしまう程の技の切れと力がある。何より彼女は人工知能なのだ。元々自分のデータベースに無いものを表現できる自体が奇跡なのだ。
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