神々の旗印133


 正太郎は言うや、胸のペンダントトップを握りしめた。その先には、自分の命を賭して彼を助けたアイシャ・アルサンダールの真っ直ぐな想いが込められている。

「なあ、烈。俺ァよ、この世に神が居ようが居るまいが、それはどっちでもいいと思っている」

「……う、うん、そうだね。兄貴は昔からそういう考えだもんね」

「だがよ、そうは言っても前々から薄々感づいていたんだ」

「何を?」

「決まってんだろ。この俺の天命さ」

「てんめい?」

「ああ、そうだ。どこぞの神様だかあっちこっちの自然の成り行きだかその違いこそ分からねえがよ。どうやら、そう言ったもんがこの俺にやらせたがってる宿命みてえなものを感じるんだよ。この俺の胸の前で永遠に眠り続けているアイシャも言っていた。俺の命を狙って、それでも何度も助けてくれたエナも言っていた。自分の命と引き換えに俺の目的を支えてくれたアンナも言っていた。そして、何より目標を見失っちまっていた子供の頃に、すげえ期待を寄せてくれた悠里子も言ってたんだ。この俺は、みんなの期待に応えるために生きているってことをな!!」

「そうだよ、兄貴!! 兄貴のやろうとしていることは兄貴一人にしか出来ないんだ!! だけどそれは兄貴一人だけで出来るわけじゃない。オイラや、マド兄ぃ達や、お師匠のゲネック先生、それに兄貴超大好きな小紋ちゃんやマリダちゃんたちの沢山の人たちの支えがあって出来たことだもんね。沢山の人と巡り会って来たから出来たことだもんね!」

「そうよ、その通りよ。だがな、勘違いすんな、烈。それだけじゃ駄目なんだ。今の俺には、これから目の前の狂気と化したアイツみてえな奴らとも命を賭してしのぎを削り合わなくちゃあならねえんだ。そうでなくちゃ……」

「そうでなくちゃ?」

「ああ。そうでなくちゃ、この俺ァ、ここで全てが終わっちまうんだ!!」

 正太郎はそう言葉を言い放つと、推進スロットルを全開にし、

「行くぞ、烈!! 対象との距離五百メートルまで接近し、それからレールキャノンの狙撃ポイントを確定する!! それまでテメエはレールキャノンの狙撃の為のエネルギー充填の計算と、あらかたの狙撃候補地の策定に専念しろ! 後のことはこの俺に任せておけ!!」

「アイアイサーだよ、兄貴!! オイラは兄貴の指示に専念する!! 後の事は、オイラの命も全て兄貴に預けるよ!!」

「応よ、任せておけ!! そら、気合入れて行くぞ!!」




 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る