神々の旗印134
目の前には、積乱雲をも突き抜けんばかりの赤いフェイズウォーカーの姿があった。
その巨大になり過ぎた体は、重力に逆らいながらも態勢を整えようとするが、そこは絶対に自然の摂理が許さない。今の今まで物凄い風圧を与えていた二本の腕は表面部分から所々に崩壊を見せ、真空状態を作り出していた鋭い動きは途端に鳴りを潜めていた。
しかし、それでもその姿はこの密林に満ちたヴェルムンドの世界を崩壊させるには十分な勢いがある。
正太郎の駆る烈風七型は、赤いフェイズウォーカーの死角になるよう背面を目指し、この巨木と豪雨が入り混じった大風の中を羽虫が舞うように突き進む。
しかし、敵もさるもの引っ搔くもの。どんなに大きな姿であろうとも、100パーセント狙撃可能なポジションを与えようとはしないのだ。
「クッ……!! やるじゃねえか、あのひねくれ野郎ども。どんなに心の中が歪んじまっていようが、今や奴らは
「だね、兄貴!! きっとあの中に宿っている人たちも今の体に変化して、兄貴の気持ちが分かって来たころなんじゃないの?」
「へへっ、そうだと良いんだけどな。しかしどうやら、そう簡単に問屋が卸してくれそうにはないらしいぜ? 一度放たれた憎しみの矛先は元には戻れねえのが人間ってえもんよ」
「まったく、何かにつけ合理的な生き物じゃないんだね、人間って生き物はさ」
「あたりめえだろ、だから人間なのさ。テメエら人工知能みてえに。
「それもそだね」
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