神々の旗印101


 マーキュリーの言葉は堅実だった。そこに何の飾り気などない。その言葉こそが彼らの未来を示しているのだ。

「今、俺たちはそんなにヤバイのか?」

「アタリマエです!! ただでさえ数的には1対5ナノデスからね。イクラ先程良い戦闘データを取れたトシテモ、コンナ状況デハ数的劣勢ニ変わりゴザイマセンワ! ソレニ……」

「それに?」

「ソレニ、ドウヤラ……、敵側の機体ハ、こちらが攻撃を仕掛ける度ニ、ソノポテンシャルが逐一上がってオリマスノ……」

「な、なんだって!?」

 流石のマーキュリーですらも焦りを感じている様子だった。こんなほんの数秒の感覚で、敵側の機体は凄まじく戦闘ポテンシャルを上げているらしい。彼女の演算能力が逐一それを示しているということだ。

「考えラレマセンワ、こんな事態ナンテ……。敵側ノ人工知能ノスペックがコンナ跳ね上がり方ヲ続けたナラ、数時間後にハあの機体タチハ正ニ怪物ニナッテシマウワ……」

「そ、そんな……」

「ヤルノナラ、今しか御座いまセンワ! あの機体タチが、真の怪物となる前に……」




 その時間軸と同時に、正太郎らの小隊も悪戦苦闘の真っ最中であった。

「おい、エセンシス! あの赤い機体はお前には無理だ! お前は被弾したマドセードの機体を援護しつつ、早雲ちゃんの機体と合流して三位一体で自分たちを守れ! 俺はあの赤い機体を追う!!」

「りょ、了解しただすです!! 背骨折りさん、後は任せただすです!!」

 次から次へと空間の裂け目からしゃしゃり出て来る融合体の化け物に、彼らは際限のない地獄を見ていた。だが、問題はそれだけではない。軍事キャンプを恐怖のどん底にまで突き落としたあの赤いフェイズウォーカーが時折り襲い掛かって来て、彼らの疲弊した心を蝕んで行くのだ。

「チィ、クソウ……!! あの赤いフェイズウォーカーは、俺たちの常識無視で神出鬼没に空間の裂け目からいきなり姿を現すと来てやがる。これじゃあ、手の打ちようがねえ……。なあ、烈。テメエの演算能力で奴の出現予測を知ることは可能なのか!?」

「そ、それが兄貴ぃ! さっきからオイラもそれをやってるんだけど、ちっとも予測が当たらないんだ。相手が人工知能ならある程度の実績を基にパターンを予測できるんだけど、どうやらそういうのとも違うみたいだし……」

「じゃあ、やっぱりあの機体の中には人が乗っていると……?」

「それがさあ、兄貴。どうやらそういうわけじゃないみたい……。オイラたちが考えているのとも違うみたいなんだ」

「何だと!? それはどういう意味だ!?」

「何て言うか、人が沢山乗っているみたいな感じなんだよ。あの中に……」

「は? 何だよそれは!? 沢山って」

「それがとにかく沢山なんだ。今、簡単に演算予測しただけでも、ざっと一億人ぐらい……」

「な、何だと!? 一億人だと!?」



 

  

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る