神々の旗印75


 ※※※



 今回の羽間小隊の作戦メンバーは、羽間正太郎とその愛機、烈風七型高速機動試作機――烈太郎。

 そして小隊の副官としてマドセード・モーメス。と、その愛機、白蓮改金仕様バージョン――人工知能ダムキナ。

 その弟のエセンシス・モーメスが駆る白蓮改銀仕様バージョン――人工知能ナブー。

 さらに、今回組み合わせが初の出撃である黒髪の美少女早雲が搭乗するのは、最新鋭フェイズウォーカーであるクイーンオウルⅡ型――人工知能アーシラトである。

 そして、この小隊の殿しんがりを任されたのは、何を隠そうジェリー・アトキンスの姿をした黒塚勇斗であった。彼は、イーアン・アルジョルジュから受け継いだ稀代の名機、フランキスカⅤ型――人工知能マーキュリーと共に、彼ら五人小隊の最後尾に位置することになったのである。

「なあ、クロヅカっち。あんまりそう硬くならないで欲しいでゲス。もっとこう、殿しんがりというものは堂々としているものでゲス。そうでないと、チーム全体が安心して先を進めないのでゲス」

 軍事キャンプを出るや否や、勇斗は少し前を駆るマドセードに忠告を受ける。

「その通りだすです、クロヅカ二等兵。オラたちは、前方からの障害や索敵に集中しているから、最後尾の警戒はキミに一任されているだすです。ここからのエリアは、この前の戦闘でレーダーサイトの殆どがやられてしまったから、索敵の類いは各機が行わなければならんのだすです。言わば、もうここからが本番なのだすですよ!」

 いつからか、勇斗のお世話係となっているエセンシスも、彼の覚束ない素振りに気が気ではないらしい。

 彼らは全員フェイズウォーカーに搭乗している。にもかかわらず、搭乗者の動向が第三者に見抜かれてしまうのは、フェイズウォーカーに搭載された人工知能にパイロットの心の機微が反映されてしまうからである。

 いくら勇斗が駆るフランキスカⅤ型が稀代の名機と誉れ高くとも、それをサポートする人工知能マーキュリーが勇斗の不安定な心を察知し、相対的に機体の動きとなって表現してしまうのである。

「ご、ごめんよ、マーキュリー。やっぱり俺、イーアン曹長のようにはいかないかもしれない……」

 余りの緊張に、勇斗がマーキュリーにお伺いを立てると、

「何ヲ言っているノ? クロヅカ二等兵。アナタはもう、アタクシのパートナーになったお方なのですから、そのような弱気ナ発言は無しにシテ頂きタクテヨ! 確かにイーアン様は、あの見た目とは違イ、勇猛果敢ながら優しイお方でシタワ。シカシ、アナタはアナタ、ソレはソレ! この誉れも高いフランキスカⅤ型を駆る騎士ナノデスから弱音は禁物デス!! 騎士となったナラバ騎士ラシク、ドンと胸を張って全てに備エテ身構えるモノデスワ!!」

 人工知能マーキュリーは女性型であり、いかにもと言った気高い気性を有していた。あの肉体派を誇るごま塩髭のイーアン曹長とは余りにもかけ離れた印象がある。





 

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