神々の旗印㊾
「そんなわけで、七尾大尉にもご協力願います。アイツらに合う機体の選別を手伝っちゃあくれませんかね?」
正太郎は、マドセード、エセンシス兄弟にあの厄介な二人組を押し付けられたことで、仕方なく整備班の七尾大尉に頭を下げる羽目になる。
「ようござんすとも、少佐殿。私も軍人である前に、一人の人間でございます。困った時はお互い様。まあ、あの二人は私にとって孫みたいなものでありましょう。この老体鞭打って何とかやってみるでございますよ」
「大尉がそう仰ってくれると本当に有難い。なにせ俺ァ、ここの中規模部隊の作戦指揮まで任されている……」
するとそこで、七尾大尉は物を含んだ笑い方で、
「まあまあ、少佐殿。ここの連中も、やっかみ半分、期待半分で、あなた様のこれからのお手並みを楽しみにしておる次第です。幾分、私めも同じ心境ではありますが……」
「また、そういうことを言う。大尉は、俺のことを買いかぶり過ぎなんじゃあ……」
「そうではありませんて、少佐殿。なにせ、これまでの実績があなたの背中を物語っているではありませんか。この世の中には、自分に都合の良い評価を受けたくてうずうずしている輩が次から次へと充満しておりまするでな。まるで地獄の底から湧き出て来る蛆虫どものように……。しかし少佐殿は、そんなものには目もくれることもない。何と言うか、あなた様は余りそういったことに御関心がないと見られる」
「そんなことはないですよ、七尾大尉。俺だってそれなりの評価は欲しい。だが、その前に、結果も中身もなければ事実生き残って来れなかった。ただそれだけです。だって、作戦も任務も遂行し切れなけば、そこで誰かの命が絶たれちまうでしょう? よって必然的に俺の命も絶たれちまうことになる。だから俺は死ぬ気で生き残って来た。俺にとっての評価なんて、結果の後に付いて来るものでしかなかった。本当にそれだけなんですよ」
「ふうむ……。この世の中、少佐殿が仰るような考え方ばかりならようござりまするがねえ……」
七尾大尉は、これまた何か奥歯に物が挟まった言い方をした。
不思議に思った正太郎は、
「何かあったんですか、大尉?」
「い、いえこちらの話で……」
七尾大尉がそこで口をもごもごと言葉を濁す。すると、
「おい! ここにハザマとかいうよそ者出身の作戦指揮官はいるか!?」
と、キャンプ内に泥を撒き散らすような不躾な大声の男が入って来た。
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