神々の旗印⑲
素っ頓狂な雄叫びにも似た大声を上げながら、岩男のマドセードが駆け足で近寄って来て、
「な、なんでそんなことをしちまったでゲスか!? 背骨折り、あんたはどんなに組織に関与していたとしても、昔から小回りの利くフリーの身でいるとこが当然だったではないでゲスか!? なのに今更そんな風に……!!」
「へへっ、勘違いすんなよマドセード。別に俺ァ、世の為人の為だとか、てめえ達の生活の為だとかだけを考えているわけじゃねえ。今回は、俺自身がこの戦場から逃げ出さない口実を作ったまでのことよ。一応のこと今回は暫定的にこのペルゼの軍属になったわけだ。そうすることによって、俺の背中には沢山の連中の命を預かる義務が発生してくる。沢山の連中の命運を左右しちまう責任が発生してくる。てえことはよ、俺ァ、五年前みてえに自分の好き嫌いだけで逃げ出せねえ縛りが出て来るってわけだ。まあ、そんな後ろ暗れえ理由があってのことだ。そこんとこ察してくれ」
正太郎が言葉を放つや、その場にいる五人は誰一人として何も言い返せなかった。
羽間正太郎が、五年前のヴェルデムンドの戦乱で突然失踪してしまった逸話は、一般的な現代戦史の中でも登場するほどに有名な話だった。巷では、その過去の足跡を様々な憶測や推察から検証する試みも見られているほどに。
それほどまでに彼の反乱軍からの失踪は、このヴェルデムンドの歴史を左右したとの見解もなされている。
ここにいる羽間正太郎以外の五人は、何だかんだと言っても中身は軍属の端くれであった。それだけに、彼への重責を鑑みれば、この判断がただならぬ事態であることが
そんなやり取りを見つめ、
「あ、あのユートさん。何だか私たち、とんでもないことになってしまったみたいですね」
黒髪の美少女――人工知能の早雲が、ジェリー・アトキンスの姿をした勇斗の耳元でこっそりとつぶやく。
「ああ、だけどこの状況を見たら、俺たちも俺たちだけの事ばかり考えているわけにはいかなくなっちゃったみたいだよな」
勇斗はため息混じりに返答した。
ジェリー・アトキンスの姿をした勇斗と、黒髪の美少女――早雲に適性を合わせられるフェイズウォーカーはなかなか見つからなかった。
なにせ、彼らの身体能力値と精神能力値のアンバランスさが、量産型のサポート人工知能に適さないのだ。
「なんでえ、おめえら。技術も適性値もそこそこあるってのによ。肝心の人工知能との相性が最悪だな。みんなおめえらとは組みたくてねえって、総スカンだ」
教官役のイーアンが、渋い表情で二人の背中越しにモニターを見つめまくる。「こりゃあ、フェイズウォーカー乗りにすれば、
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