虹色の人類101


 ※※※



 鳴子沢大膳は、現政府から失踪後、数日も経たぬまま彼ら虹色の人類のとりでとなっているとある地下施設に案内された。

 そこは、かつての戦乱で格納施設として使用された今は無きヴェルデムンド新政府軍の旧軍事施設跡地である。

「ま、まさか……、貴様らの本拠地が、我々の第三寄留に程近いこの場所にあったとはな……」

 大膳は、まるでのように物珍しい物を見る仕草で口をポカンと開け、右よ左よと浮足立った態度を見せる。

 すると、案内役の拘束衣を纏ったままの大膳は溜め息をつき、

「だから貴様ら人間は愚かだと言うのだ。特に貴様は、何もかも分かっている振りをして、てんで実情を把握していない。たとえミックスという文明の利器をその体の中に宿していたとしてもな。それで執政を司っていたというのだから、本当に別の意味で度し難いものがある」

「そ、それを言うな……。すでにくじかれそうな心が、さらにくじかれるではないか……」

「いや、この際だ、とことん言わせてもらうぞ。なにせ、この施設など、あの戦乱の最中から我々虹色の人類がその大半を秘密裏に占拠していたのだ。それがどういう意味を示すのか、貴様に理解出来るか?」

「む、むう……。つ、つまりはあれか……? 前々からお前たちが、我々の共有している情報ですら操作していたと言う意味かね?」

「ふっふっふ、危なかったな。そう、その通り、ご明察だ。貴様たち第六世代人類は、外的要因となる技術をその肉体に埋め込むことに因って進化の一途を謀ろうと邁進した。だが、その邁進こそが我々虹色の人類の思う壺だったということだ」

「そ、それはまさか……!?」

「そう、そのまさかだよ。我々虹色の人類は、あらかじめ貴様ら第六世代人類がそうなるように誘導していたということだ。つまり、我々が貴様らミックスの産みの親だったと言うわけさ」

 拘束衣の大膳は、したり顔のまま顎を高々と上げて笑う。

「ということは、あのヒューマンチューニング計画の裏には、貴様たち虹色の人類が糸を引いていたというわけなのか!?」

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