虹色の人類78
「それ以上行っては駄目よ、ショウタロウ・ハザマ!!」
彼の背後から凄まじい勢いで光るナイフが飛び込んで来た。
瞬間彼は出遅れたが、何とか振り向きざまレーザーソードの柄の部分でそれをキャッチし、ありったけの力を込めて跳ね返した。
「きゃあ!!」
エナの姿をした分身はけたたましい悲鳴を発しながら尖った壁に勢いよく叩きつけられた。そしてぐったりと動かなくなる。その体は、やがてどろりとした液体のように床一面に突っ伏したかと思うと、玉虫色の光を帯びながら力を無くしてゆく。
「チッ、ここも感付かれたか!?」
今のエナは、この分身たちと一心同体である。もうすでに他の分身たちにも居場所が知れ渡っているに違いない。
しかし、今のエナの一言は何だったのだ!? 余りにも唐突な出来事であったためか正確には聞き取れていなかったが、正太郎の耳にはとても気になる一言が聞こえて来たような気がする。
だが、それを考えている暇などない。今は、彼女ら分身の大群からこの身を隠さなければならない。
正太郎は、必死になって先程視界に入って来た光の点のある場所に駆け込んだ。少なくとも後戻りをするよりは、身の危険から守る術が隠されているような気がしたからだ。
案の定、坑道の床の上からは、軍靴のけたたましい足音の響きがこちら側にどんどん近づいて来るのが分かる。
正太郎は、その光の点に向かって思いきり駆けて行く。すると、その点は次第に大きくなり、やがてそれが自分の身体の大きさ程もある光の球であることに気付く。
「な、なんだこりゃ!? これはまるで、あの時に見た球とそっくりじゃねえか!?」
そう、その光る球は、あのアイシャ・アルサンダールをすっぽりと飲み込んでしまった時の繭玉のように妖しく煌めいている。
しかし、同じものとは言ってもまるで大きさが違う。正太郎が、今現在首から下げているペンダントの先には、アイシャが取り込まれてしまった時の真球が付いている。
確かにそれから比べると、一目瞭然に雲泥の差が認められるが、見れば見る程同じ様相を呈している。
「どういうこった!? 何なんだこりゃあ!?」
その光に満ちた物体の前で、正太郎がたじろいでいると、
「とうとう見てしまったのね。見てはいけないものを……」
と、背後からエナの分身たちが一斉に同じ言葉を発したのだ。
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