虹色の人類67

「な、何だよエナ……、お前は俺をおちょくっているのか? 突然人をおだてるのかと思いきや、いきなり異常者みたいに蔑んで見たり……」

「ふふん、だからあなたはお人好しだと言うのよ、ショウタロウ・ハザマ。あなたのその類稀なる共感能力は、今までの歴戦の中でもこれからの時代を読み解く凄まじい武器と言っても過言ではなかったわ。でもね、そこがあなたの唯一と言っても良い最大の弱点なのよ」

「な、なんだと……!?」

「これからのあたしたちが描く未来は、個人の能力だけが問われる時代ではないの。あなたのように際立って眼立つような存在は、かえってこれからの時代には邪魔なだけ。目障りなのよ」

「何言ってんだ、エナ!? 別に俺はそんなふうに思って生きてきた覚えはねえが……」

「ふん、あなたがそう思わなくても、誰もがそう考えているのよ。この世界中の誰もがね。いえ、少なくともペルゼデール様はそうお考えなはずよ。そう、あなたの言うように人は万能ではないわ。だからこそ恐れるのよ。際立つ者の存在を! 一見秩序的な平和な街に、腹を空かせた虎が一頭放たれただけで、住民たちはどう感じるのかしらね? それをあなたに例えて想像してみるといいわ。インターフェーサー?」

「この俺が、その虎だとでも……?」

「そうよ。あなたは、その素質を持って生まれて来たのよ。そしてその能力を最大限活かし、途轍もなく波乱に満ちた経験を積むことで異常とも言える存在になってしまっているの。それはもう、人類という集団から見れば間違いなく異端だわ。虎を超えた異端の存在なのよ! そしてその異端者に彼のような純粋な魂を預けておくことは出来ないの!」

「か、彼!? そ、そうか、烈太郎の事だな!! なぜそこで烈太郎が出て来る!?」

「ねえ、あなた本当に知らないの? 烈太郎くんが開発された本当の目的のことを。まあ、あなたは科学者でもなければ研究者でもないから知らないのは当たり前だけど……、あの桐野博士はねえ、この世界の……いや、あたしたちの母世界であるあの地球と、このヴェルデムンドの世界の秩序を一旦全て破壊して、また再構築させるために烈太郎くんというユニットを開発したのよ!」

「な、なんだって!?」

 この時、さすがに正太郎はひるんだ。確かに烈太郎は、今まで存在したどんな人工知能よりも不思議な学習能力が垣間見られていた。そして、感情を表すプログラムユニットもどんどん表現を増してきた。特に、人の感情を察することにおいては人一倍人間的になって来ている。

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