虹色の人類㉝

 

 エナはその殊勝な言葉とは裏腹に、軍服の上着を前かがみになって脱ぎ出して来る。そして彼女は続けざまピンク色のインナーシャツをたくし上げるのであった。

「エ、エナちゃん……、いけない、いけないよう、それ以上はいけないんだよう!!」

 烈太郎は仮想実体を伝い、懸命になってそれを阻止しようとするが、いかんせんその姿が仮想実体なだけにどうにもなるものではない。

 烈太郎はオロオロするばかりである。エナはそれをいいことに、ポイッとインナーシャツを脱ぎ捨てると、次はズボンのベルト外しに取り掛かった。

 彼女はどうやら本気のようである。それを分かっていても、烈太郎はどうにもあたふたしてしまい対処し切れるものではない。

 エナは瞬く間にズボンのファスナーを下ろし、腰の辺りからずいっとズボンのウェスト部分を引き下げてしまう。するととうとう、彼女のいかにもシンプルで可愛らしいピンク色の下着姿が露わになった。

「エ、エナちゃん……!!」

 烈太郎は自分が人工知能だということも忘れ、どういうわけか仮想実体の顔を真っ赤にしながら目の部分を手のひらで覆い隠した。

 しかし、そこでまったくひるまないのがエナ・リックバルトである。彼女は、機械のくせに妙に恥ずかしがる烈太郎の様子を上目遣いで確認するや、

「これじゃあ、まだあたしが虹色の人類なのかそうでないのか確証が得られないでしょう?」

 そんな無機質で機能的な言葉だけを発し、今度は両手を背中に回しブラのホックを外しに掛かる。

「なっ、なにやってんの……!!」

 烈太郎はひるんだ。それと同時にエナは、その細く透き通るような白い肩からブラの肩ひもを滑らせる。すると案の定、彼女の胸部からまだ申し訳程度で発展途上の性の膨らみが露わになり掛けるのだ。

「ああっ、エナちゃん!! それ以上はダメなんだよう!!」

 烈太郎はその瞬間、つい本能的にコックピットのハッチを開けてしまった。そして彼の機体本体を強引に揺さぶり、

「そういうのはオイラの中でやって!!」

 とばかりに、エナを自分の機体内に放り込んでしまったのである。

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