虹色の人類⑳
「あら、仕方ないじゃない。あたしは、あなたたちを助けたことに対して恩を着せるつもりはないけど、こうやって伝説の機体を目の前にしてしまうと、どうしてもそれを見たくなってしまうのが人間というものじゃなくって? そりゃあ、あたしたちだって半分近くが機械になったとは言え、所詮は人間の端くれなのよ。押すな押すなとタブーの念を押されれば、押してしまいたくなるのが常道なのよ」
「そりゃそうだがな。エナ……」
エナの言う事は間違いなく詭弁である。だとしても、こうもあっけらかんと素直に心情を説かれてしまうと、さすがの正太郎も返す言葉が無くなってしまう。
「いいじゃん、兄貴。オイラ、結構この姿が気に入ったよ。エナちゃんありがとう。ほら、兄貴からもお礼を言って」
「お前なあ……」
正太郎は機嫌を良くした烈太郎に促されつつ、
「すまんな、エナ。ここまで世話になっちまって。ありがとうな」
「フフフ、良いのよ、ショウタロウ・ハザマ。……だけどこれから十分に注意してね。ここからがあたしたち人類の正念場よ。あの通り、虹色の人類はどんな手を打ってくるか知れたものではないわ。特に、あなたは虹色の人類にとっても、あたしたち人類にとっても有用的で、その反面驚異的にならざるを得ない存在なんだからね。そこのところを良く自覚して行動して欲しいわ」
「何だよエナ、そりゃ買いかぶり過ぎだぜ」
「いいえ! あたしは五年前の戦乱以降、あなたの研究を怠らなかったわ。だから分かるの! 何もあたしは、あなた個人の能力のことだけを指して言っているわけじゃない。個人的能力だけで言うのなら、あなたレベルの人間はきっと数限りなくこの世界中に五万と存在しているわ! でもね。積み重ねてきた物。そしてそれによって得てきた自信や勇気、決断力。そしてさらに、集団の中に及ぼした時の影響力はもう並大抵の物じゃなくなってしまったの! これは結果論よ。それを解かって!? それがこれからの状況で一番の脅威にもなり兼ねないの! だから本当に気を付けて欲しい。どんなに嫌なことがあっても、どんなに苦しいことがあっても、あなただけはあたし達の味方であって欲しいのよ!」
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