虹色の人類⑭


 大膳は、執務棟のエレベーターを何十階と昇り上がる途中、様々なことを考えを巡らせていた。

 確かに今回見つかった虹色の人類による複製人類は、さほど害悪を及ぼさずに捕縛し、駆除することが出来た。それは、言うに及ばず彼らの考える理想国家の実現による賜物であろう。

 さらに、複製人間を発見できた背景には、ペルゼデール・ネイションの中央システムに、彼ら国民の全てがミックスやネイチャー、ドールでさえ問わずに、AIカウンターと呼ばれる評価リングを装着しているからである。

 そのAIカウンターが端末となり、国家の中央システムの評価によって国民の全てが仮想通貨の報酬を受ける。その中央システムが善い行いと判断すれば、『ペルゼデール・PAS』と呼ばれる仮想通貨の報酬を受け、悪い行いであると判断されれば、その仮想通貨は差し引かれるというシステムのことだ。

 それにより、国民はこぞって善であるという行動についての研究を怠らなかった。それが今のペルゼデール・ネイションの国民意識の基軸となっているのだ。

「しかし、このような砂上の楼閣がいつまで持ち堪えられるものか分かったものではない。私は、早くから虹色の人類の存在を知ることで、何とかこうして対抗策を打ち出してきたものだが……。昔、羽間君が声を大にして言っていたが、人間自然の摂理に反すれば、それはいつか無理が祟って反動を起こする恐れがあるやもしれんということだ……」

 さすがにここまでの先進的な国家作りに邁進してきた鳴子沢大膳であっても、どうにも先行きの不安だけが募る。彼とて、いまの国家運営システムが完全なるものでもなければ、人道的に正しいやり方であるとは考えていない。ただ、自分たち人類に必ず脅威となって現れる〝虹色の人類〟の対抗策としてひねり出した突貫策でしかないのだ。

「どうにも致し方なかったとはいえ、強制的なる善を国民に押し付けてしまうのは、過去の歴史から鑑みても反発を招く誘引ともなり兼ねん。しかし、そうでもしなければ、我らは虹色の人類によって破滅へと導かれてしまうのだ。さて、これからどうしたらよいものやら……」

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る