緑色の⑦


 ペルゼ―デール――

 またしてもこの名前がクリスティーナの前に立ちはだかった。

 彼女は、鳴子沢大膳が中心となって発足した『ペルゼデール・オークション』という秘密結社に属している。しかし彼女は、なぜこの組織の名前が〝ペルゼデール〟なのかも〝オークション〟なのかも深い部分は知らされていない。

 過去に大膳は言った。

「私たちは、ペルゼデール・デュワイス兄弟団という謎の組織に鎌をかけるため、この名前を冠したのだ」

 ――と。

 ならばなぜ、〝オークションでなければならないのか?

 オークションという意味は、言わずと知れた競売を意味する単語である。ならばこのネーミングは不自然過ぎる。

 現在設立した新国家名は、〝ペルゼデール・ネイション〟である。ネイションは、国家や国民、民族を意味する言葉だから何の不思議もないが、ペルゼデールに関して言えば、これは多分固有名詞なのだろうと見当はつく。

 しかし、このペルゼデールとは一体何なのだろうか? クリスティーナは常々疑問に感じていた。彼女はそれを率直に大膳やゲオルグ博士に問い質してみたところ、

「それは私らにも解からんよ。ただこれだけは言える。その名前こそがこれからの時代の鍵となることを」

 ということだった。

 そのペルゼデールという名前が、今まさに聞き取れたのだ。この敵方と判断される黄金の円月輪という謎の組織の刺客の口から。そしてそれは、彼らの神の存在に相当するニュアンスとして伝わって来た。

「女よ。冥土の土産に聞かせてやろう。我らの体も心も、全てが始祖ペルゼデール様の意図によって作られてる。おそらく、貴様の父親も何かを調べ上げているうちに、その情報にたどり着いた。だから貴様の父親は死なねばならなかったのだ」

「なんですって!? じゃ、じゃあ……、お父さんは、たったそれだけの理由で殺されたとでもいうの!?」

しかり。だが、それは小さな理由ではない。この地球人類の根本を揺るがす大事実なのだ」

「な……、それはどういうこと?」

「なぜなら、この地球人類の存在こそが、この宇宙全体に於ける勢力争いの鍵となるからだ」


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