野望の121
烈太郎の発声とともに、即座に両肩に装備されたレールキャノンが火を噴いた。
今回の弾頭も拡散型弾頭だが、烈太郎の計算により一早く小型弾頭に分散される。それによって射出間もない弾頭は、烈風七型の目の前で瞬きをする間もなく蜘蛛の子を散らすように分散していった。
さすがは高出力、高エネルギーを誇るレールキャノンである。大空より大群の成して特攻を仕掛けて来るおおよそ数百体にも及ぶヴェロンの集団は、先端から波を描くが如くその姿を放射状に順繰りと破裂させてゆく。
そして、その大群が跡形もなく消え去ると、やがて濃い緑色をした霧状のガスが辺り一帯を暗黒の雰囲気へと誘い始めた。
「や、やったのか……!?」
「う、うん。どうやらやれたみたいだね、兄貴……」
二人は互いに現実の状況を把握しながら、半ば茫然とした表情のままその光景の中に佇んでいた。
正太郎は、あの凄まじい状況に耐え抜いた結果、まだ体じゅうに力が入らなかった。
烈太郎は、凄まじく高エネルギーを消費するレールキャノンを撃ち終えたことで、まだ通常運転に回復していなかった。
互いに限界を超えた戦闘の後だったがゆえに、これから起きる途方もない出来事への心の準備というものが出来ていなかった。
「エナ……、アナタは一体……!?」
金髪の兵士に寄生したグリゴリは、焦燥のまま取り囲まれた兵士によって逆に拘束されてしまった。彼は、息つく間もなく電子式手錠を嵌められ、鋼鉄製の拘束衣を全身に装着されるとともに、頭には見たことも無いデザインのヘッドギアを被せられた。
それを確認したエナは、
「もう逃げられないわ、グリゴリ。そのヘッドギアがある限り、どんなにあなたが逃亡しようとしても三次元ネットワークに繋がらないことになっているの」
そう言って、駆けつけてきた兵士数人に自らの拘束具を外させる。さらに、
「仲間に助けを呼んでも無駄よ。あの人たちも、こちら側の兵士に拘束させたわ」
グリゴリは怪訝な表情で、
「コチラ側?」
と、問い質した。すると、
「ええ、あなたはもうすでに忘れてしまっているでしょうけど、あの五年前の一件以来、あたしたちはある方に忠誠を誓っているのよ。本当にお忘れなのね?」
「ある方……デスト?」
「ええ」
彼女はそう返事をして、拘束衣のまま膝まづかせられたグリゴリの長い髪をむんずと掴み込んで、
「決まっているじゃない。私たちの大始祖であるペルゼデール様に……」
そう言葉を叩きつけると、唐突に彼の頬に往復ビンタを三発食らわした。
驚きと屈辱が入り混じった表情で睨み付けるグリゴリに、
「あなたがそんな顔をするなんてね、お門違いよ。あたしだって、あなたに銃口を突き付けられた時は、それ以上の怒りが込み上げてきたもの。これでおあいこよ」
そう彼女は言葉を吐き捨てて、顎で兵士たちに合図した。すると、兵士たちは一礼をすると、言葉もなくグリゴリを外へ連れ出そうとする。その時、
「エ、エナ……!! 一つだけ教えて欲シイ!! アナタはこれからどうしようというノダ!? ペルゼデール様に何を吹き込まれたというノダ!?」
「吹き込まれたですって? これだから、中途半端な機械頭は困るのよ。せっかくあの時助けてあげたのに、恩を仇で返しているのはあなたの方なんですからね」
「ナンデスト!?」
「あなたの様な出来損ないの人工知能なんて、本来なら必要なかったの。だけど、あたしの温情でその命だけは折角だから取り留めてあげたってのに、本当に解かってないんだから。始祖ペルゼデール様はね、今の人類が愛おしくてたまらないのよ。だから新たに強力で優秀な人類を創造するのよ。ホモ・サピエンス・ヴェルデムンダールをね……」
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