野望の117
その時である。
「おい、烈……レールキャノンの準備だ」
正太郎のまだ明けやらぬ冬の空の様な、低く響き渡る声が聞こえてきた。
「あ、兄貴ぃ! 良かった、やっと兄貴が目を覚ましてくれた!!」
「なんでえ、随分情けねえ声出すじゃねえか……。俺ァ、そんなに長い間お寝んねしてたっていうのかい?」
「そ、そういうわけじゃないけど、兄貴。もう、ソニックブームキャノンが限界なんだ!」
「ああ、分かってるさ。よくぞここまで持ちこたえてくれたな……、礼を言うぜ、烈太郎」
「あ、兄貴……」
烈太郎はこの窮地の中で、まるで陽の光を一気に浴びたような心強さを得た。正太郎が、どんなに自分自身の力に限界を感じようとも、烈太郎にとっては彼の存在は絶大なのだ。
「でも兄貴。レールキャノンを撃つのはいいけど、準備の時間はどうするの?」
「ああ? 決まってんじゃねえか。俺が全部撃ち落とす」
「撃ち落とす? どうやって?」
「そりゃ決まってんだろ。これでさ」
正太郎は言いながら、両腕に装備されたレーザーソードを掲げた。
「そ、そんな無茶だよう! 人工知能のオイラがやっとの思いでソニックブームキャノンで対処してるってのに、生身の兄貴が近接戦闘だけでこの攻撃を対処し切れるはずが……」
「いいか烈!! この期に及んで金玉縮みこましてる暇はねえんだぜ? 今しかねえんだ。この背後に奴らの死角が出来上がった今じゃねえと、レールキャノンは撃てねえんだ! それにはよ、この俺が死ぬ気で奴らを撃ち落さねえといけねえんだよ!!」
どうやら正太郎は本気のようだ。確かに彼が言う通り、この窮地を乗り切るにはこの方法しかない。だが、戦闘マシンたる烈太郎ですらやっとの所を、ネイチャーたる正太郎の力でこれを対処し切れるものだろうか?
烈太郎は一瞬考えたが、
「兄貴! 分かったよ。アイアイサーだよ。オイラ急いでレールキャノンの準備に入るから、ここから兄貴に全てを託すよ」
「おうよ! なら、次の号令で攻撃交代だ! それ! 一! 二! の三!」
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