野望の76
正太郎の視線の先には警備兵たちが残した装備品が散らばっていた。彼はあの中にある〝ある物〟を使用しようというのだ。
だが、その装備品を取りに行くにしても針の弾丸のカーテンを避けなければならない。
躊躇している暇はなかった。反乱軍の総攻撃までのタイムリミットはあと8分。こうやって迷っている瞬間でさえ残酷にも時は過ぎてゆく。
正太郎は、身を隠している袋小路から少しだけ顔を覗かせると、
「男は度胸!!」
そう言って胸ポケットから対スティルベレット弾用の簡易シールドを差し出し、針の弾丸の雨霰の中に飛び込んだ。
武装アンドロイドは正太郎の広げた簡易シールドに気付くと、そこに振り向き一斉に射撃を開始する。案の定、簡易シールドは所詮簡易シールドでしかなく矢を放たれた瞬間にボコボコとクレーター状のへこみ穴が出来た。かと思うと、装甲が耐えられず数秒もせずにボロ布のように破壊されてしまった。
しかし、その場所に正太郎の亡骸は無かった。彼はシールドを囮にして、武装アンドロイドがそこに気を取られている瞬間にその場を脱出し、お目当ての装備品を奪取したのだ。
「ふへえ、やれやれ。間一髪だぜ……」
彼は滴る冷や汗を拭うと、戦利品の中身を確認した。
「あったあった、これよこれ。やっぱこいつら、俺を見つけ出した時の為にこれを持っていやがった」
そのお目当ての物とは、少し前に正太郎が追い詰められた時に敵軍が使用して来た〝共鳴スピーカー〟である。共鳴スピーカーは、アンナが捕らえられ、正太郎が追い詰められた時に相手側が交渉の為に使用してきたアイテムだ。共鳴スピーカ―は特殊な振動の共鳴により、どんなに分厚い隔壁があろうとも対象に音声を送る届けることが出来る優れものだ。
正太郎がこれを警備兵たちが持っていると睨んだのは当然のことで、三次元ネットが使えない正太郎に対し万が一何らかのコンタクトを取る手立てとして装備していると踏んだのだ。
「これがあれば、何とかなるかもしれねえ……。ただ、確証はねえがな」
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