野望の⑨


「待ちやがれって言ってんだろ!」

 烈太郎は、正太郎の怒号にも耳を傾けずホバー全開に機体を突進させた。

 レールキャノンは強力な武器であるがゆえに、搭乗者の同意が得られなければ使用はできない。しかし烈太郎はレーザーソードのみで切り掛かってゆく。

「許さないぞ! お前たち!」

 その速度は通常の戦闘速度の二倍半。搭乗者が正太郎でなければ失神を余儀なくされる重圧である。

「バ、バカ! ……そんな突っかかるやつがあるか!? おい、どうしちまったんだ、烈!! 狂っちまったのか?」

「何言ってるんだよう、おかしいのは兄貴の方じゃんかよう! オイラ、あったま来た!」

 烈風七型に寄り集まって来る機体は全部で六機。彼らは取り囲むように陣形を取り、素早い動きで接触を試みようとしてくる。

「は、速いな! こいつは見たこともねえ機体ばかりだ。新型なのか!?」

 正太郎は重圧に耐えながらも、的確に敵を識別する。だが、烈太郎は人工知能ながらも頭に血が上ったままでそれらに対する攻撃を止めようとしない。

「あの子たちの仇だぁ!」

 烈太郎はレーザーソードを振り回した。だが、その一閃は見事に空を切った。敵の機体が寸での処で烈太郎の攻撃を避け、一瞬にして後退したからである。

「なんと!」

 正直、正太郎ですら声を出して驚いた。確かにこの攻撃は烈太郎の単独の間合いなのであるが、それにしても今までならかすり傷一つ負わせられない間合いではない。

「なにおう!」

 烈太郎は自分の攻撃が避けられてしまったことでさらに熱くなった。これまでの経験上、こんな風に簡単に攻撃をかわされたことは初めてなのである。

「いくら兄貴が手伝ってくれなくたって! オイラだけでも、オイラだけでも……!!」

 そう言いながら二本のレーザーソードを振り回し、烈風七型に寄り集まって来る機体に攻撃を仕掛けるが、まるで影を追うように掴みどころなくかわされまくってしまう。

「おい、烈! よせ! 操縦を俺に変われ! いくらなんだって、今のテメェにはこいつらは無理だ! メイン操縦を俺によこせ!」

「いやだ! オイラはもうあったま来てんだ! 許さないんだ!!」




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