野望の⑦


 烈太郎は、機体を二つの生命体の表示がある座標に寄せた。

「おい、烈。先ずは、その生命体反応が何であるかの確認からだ。拡大できるか?」

「オッケーだよ、兄貴。動く物の映像は捉えた。瓦礫の陰でまだよく分からないけど、どうやらちっちゃな動物みたいだよ。ほら、猫とか犬とかみたいな」

「みたいな、じゃだめだ。最後までちゃんと確認しろ! お前の持っている生物データと照合が出来なければ、厄介なことになるやもしれん。ここは慎重に……」

 正太郎は、モニター画面を覗きながら息を飲んだ。ここは地球ではない。ヴェルデムンドなのだ。何が起きても不思議ではないまだまだ未知の世界なのである。

 まして、アヴェル・アルサンダールが使用したあの兵器によって何かおかしな雰囲気が辺り一帯を取り囲んでいる。それゆえに、細心の注意を払わなければ命の保証など何処にもないのだ。

「あっ、兄貴。対象が出て来たよ。ほら、見て見て。可愛いじゃんか。ぷっくりした猫みたいな犬みたいな毛むくじゃらの。……うーん、どっちかって言うと大きな“まりも”のぬいぐるみみたいな。二体いるけれど、やっぱり“つがい”かなあ?」

「た、確かに可愛いな……。何て言うか、見てるとこっちまでほっこりしちまうぜ。あんなのがこの世界にいたんだな」

 遠目からであるが、その二体の生命体は実体として存在していることは間違いなかった。烈太郎の高感度センサーにも反応しているし、バイタルサインも一定のリズムを取りながら脈動を表している。先日の悠里子の幻影のように偽物というわけではない。

 しかも、彼らが感じている通り心を惹きつけて止まないほど愛らしい姿をしている。

 生粋のネイチャーである正太郎がそう感じるのは当然のこととしても、人工知能である烈太郎がここまで愛らしいと感じてしまうのだ。烈太郎にとっても初の経験である。

 しかし、その小動物は魅力的過ぎた。一度見たら絶対に目を離せないほどに――

 そこにいきなり、

「わっ!!」

 と、烈太郎が声を上げてしまう程の激しい銃声が聞こえた。そしてその銃声が轟いた途端に、対象の愛らしい生き物が銃弾に撃ち抜かれ弾け飛んだ。

「何? 一体何が起きたの!?」

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