義母のこと

 義母が亡くなる前に虫の知らせがあった話を書いたので、義母が亡くなった後の現象も書いてみます。

 この話はいろんな方に話してるのですが、下手な怪談より怖いと言われます。私にとっては怖い話ではなく、義母の思い出のひとつ、なのです。


 義母は病院で亡くなりました。入院すると、大概の方は「家に帰りたい」と言い続けるようになります。

 義母は特に帰宅願望が強い人でした。だから私の夢枕に立ったのだと思います。

 そんな義母だったからでしょうか。

 葬儀が終わりお骨になって帰宅した義母は、家の中を歩き回っていたようです。よく、気配がしました。


 私は常に体調を崩しやすく、休憩を取りながら家事をこなしています。その日も体調が優れず、日課の朝掃除に洗濯を終え、義父に10時のお茶を出した後、2階の寝室で少し休んでいました。

 うとうととしかけた時、金縛りが起きました。金縛りは心霊現象で起きるとは限りません。

 肉体が眠りのサイクルにあり、脳が活発に活動しているという状況でも、金縛りが起きるそうです。


 私は疲労のせいだろうと思い掛けました。その時、こつん、こつん、と階段を一段ずつ、ゆっくり上がってくる足音が聞こえてきたのです。

 足腰が悪い義父は、急な階段を登り降りは出来ませんでした。ましてスリッパを履いていたら、階段を登る足音は響きません。

 まるで木の棒か何かで板を叩いているような硬い音と共に、ゆっくりと上がってくる気配は、人間のものではないと感じました。


 ──ああ、義母だ。義母が、心配して覗きに来たんだ。

 金縛りのまま、私はそう思いました。思った瞬間、ふっと体から力が抜けて金縛りが解けました。

 2階の寝室の下が仏間なので、お骨の義母が様子を見に来たのでしょう。


 四十九日の納骨法要までの間、こんなことがよくありました。

 家を堪能して旅立てたのかな。

 納骨法要の後は、義母の気配は全くありません。

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