どれでもいいから!
耳はないのだから声を潜める必要もないはずだが小声で、ルカは
振り向こうとしたスガと妖異がこちらに向かってくるのとがほぼ同時で、ルカは
妖異が体当たりしたのか、鈍い肉のぶつかる音が、扉越しに聞こえた。
「――ピンク色が見えた」
「――うん」
窓から差し込むうららかな昼下がりの光の中で、ルカは、ぎくしゃくとスガを見た。
「スガ君、武器、は?」
「あ。部屋に忘れてきた」
「…予備とか、あるかな」
飛び込んだのは養護の第四隊の部屋のようだった。
誰一人いないが、ついさっきまでは人のいた気配が残り、やや雑然と物が置かれている。
人のものを無断で拝借するのは気が
早く武器を探してくれと、ルカは眼で必死に訴えた。頷いたスガは、だが、顔をしかめた。
「…ろくなのがないな」
普通であれば、武具は肌身離さず持ち歩いている。うっかり忘れるスガが例外で、普段使わない武具にそこまで求めるのは酷というものだ。
むしろ、使っていないものが置いてあっただけ感謝しなければならない。
「どれでもいいから!」
「ああ…策はあるのか?」
「壊月の七で足止めくらいはできると思う。あとは、難しいけど、晴月の三、とか」
「そうか、火も雨も使えないな。両方とも二人一緒にか?」
ルカは、考えてから首を振った。
二人ともが気を使い切ってしまうと、妖異の回収――鎖月の九の戒で、吸収することができなくなってしまう。だが、晴月の三の式で固体を蒸発させるのも難しいだろう。まして、スガは不慣れな武具だ。
「どうするつもりだ?」
「ウタを出して、ここに回収する」
「何か理由があってそこに入れたんだろう。いいのか?」
「ウタも――妖異だ。間違って攻撃されたら困ると思ったけど、仕方がない。必ずというわけでもないし」
「しかし――」
スガの反論を待たず、檻を開放する。ウタは、一目散にルカの頭にとまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます