ボクの願い
アンクロボーグ
空き地
『ボクの願い』
風雨にさらされ、塗料も剥げ落ち、誰も興味を示さなくなった古い看板。
「管理地」「建設予定地」との文字。
空き地には小雨が悲しく降り続いていた。
薄暗くなりかけた空、高く延びきった雑草に覆われた奥のすき間に1匹の野良犬の姿があった。
ボクは、とっても幸せだった、あの頃を思いだしていた。
むつみちゃんと、いつも一緒だった頃を。
ボクとむつみちゃんとは、違う種類の生き物。もちろんボクは最初から知っていたよ。
ニオイがちゃんと、そう教えてくれていたからね。
むつみちゃんは、人間、そしてボクは、犬。
でも…ボクが普通の犬では無いと知ったときは、驚いたけどね。
それは、むつみちゃんがボクをはじめて外へ連れだしてくれた時の事。
そこは、はじめて嗅ぐニオイだらけだった。ドキドキがいっぱいの
外 の 世 界
ボクたちは知性化された犬。生まれてすぐに処置を受ける。
ボクのような犬は、け・ん・き・ゅ・う・じ・ょ・の施設に他に9匹いて、ボクが最後の10匹目。
一番年下のボクのことを、他のみんなは、ちび、ちび、って呼んで可愛がってくれていた。
ボクらには、頭の後ろから首にかけて盛りあがった出っ張りが有り、自然犬とは、すぐに区別できた。
その出っ張りの中には、人間に近い思考を可能にしてくれる人工脳が植え付けてある。
生まれてから、しばらくして、ボクがボクという存在を認識出来るようになった時、最初に話しをした人間…が、むつみちゃんだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます