~最初の被害者~
調べたところ、最初の被害者は歩いて30分程の小さな村に住んでいるのだという。余裕だと思っていたが、山道でしかもかなり急な坂だったため、少しずつ体力が奪われていくのだった。
「はぁ……はぁ……。留美……大丈夫か……?」
「何とか……大丈夫!」
留美の目は赤かった。さすがに人間だと登れないと思ったのだろう。獣の体力を使っている。しばらくしてようやく、坂道は普通の道となり、村も見えてきた。
「お……。あれかな? やっと着いたぁぁぁ……」
レンはもうヘトヘトだった。村に着いた途端、座り込んだ。
「レン、大丈夫……?」
息切れするも、平気そうな留美はレンの顔色を窺う。
「ははは……大丈夫だよ……」
レンはそう言うも、汗だくだった。顔色も少し青白い。
「と……とりあえず、探すよ……!」
レンはフラフラながらも立ち上がる。
「う、うん……。本当に大丈夫……?」
「大丈夫だよ……。これくらい……。ええと……確か家は……。あ、此処だ」
レンが指をさした家は周りよりどこか古びていて、懐かしい感じだった。
ピンポーン!!
留美は倒れそうなレンを支えながら、インターホンを押す。
『……何か御用ですか?』
「あ、すみません。実は覚醒現象について調べてまして……是非、お話聞きたいなと思って参りました」
『……貴方達が何者かは知りませんが、御力になれません。すみません……』
「そこを何とか……お願いします……! 貴方だけが頼りなんです……。お願い……します……!!」
レンは力を振り絞って、頼むとガクッと体の力が抜ける。
「レ……レン!? 大丈夫!? しっかりして……!!」
レンの息が荒い。危険な状態だった。
『……今、開けますので、入って休憩して下さい』
そう言って少しして扉が開いた。
「さぁ、早く中へ……!」
「ありがとうございます……!!」
「すみま……せん……」
弱々しい声でレンは謝る。本当に苦しそうだ。
「わ……! 素敵な所ですね……!」
家の中はとても涼し気でオシャレだった。
「あぁ、ありがとう。古い家で申し訳ないけど、しばらく休んでいって下さい」
「申し訳ない……」
「構いませんよ。久しぶりのお客さんにびっくりして、あんな態度取ってしまって……申し訳ないわ」
「いえ、こちらこそ。急にすみませんでした……」
「いえいえ……。はい、冷たいタオルとジュース持ってきました。ジュースの方、御口に合うか不安ですが……」
「あぁ、ありがとうございます……。んっ…んっ…んっ……。はぁー……美味しいです! 生き返ります……!」
「良かった……御口に合って」
「とても美味しいですよ!! こんな物頂けて……嬉しいです……!!」
「そこまで言ってもらえると作った甲斐がありました。あの……さっき、御力になれないと申し上げたのですが……是非解決してもらいたいので、私で良ければ協力させて下さい……!!」
「……!! 本当ですか……!?」
「はい。久しぶりに楽しませてもらったので何かお礼したくて……」
「ありがとうございます……!!」
「いえいえ。どこまでお役に立てるか分かりませんが、よろしくお願いします。あ、申し遅れました。私は
美江はレンや留美と向き合った。はっと思い出すようにレン・キルラは立ち上がる。
「あ、すみません。私達も名乗っていませんでしたね。私はレン・キルラです。この現象のことや、言い伝えについて調べています」
「あの……レンさん……。急に立ち上がって……大丈夫なんですか?」
「美江さんのジュースのおかげで良くなったので!」
「そ……そうですか……」
美江は“良かった……„と小声で呟く。
「ええと……私も名乗っていなかったので……。私は留美です。よろしくお願いします」
留美が自己紹介すると、美江はレンと留美を見て
「レンさん、留美さん。こちらこそよろしくお願いします」
そう言って、美江は留美とレンに座るよう言い、二人が座るのを確認して美江も座った。
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