『しょせんルパンは悪党』

やましん(テンパー)

 『しょせんルパンは悪党』

 戦国時代の武将たちは、仕事として、多くの人の命を、やむを得ずだったかもしれませんが、まあ、喰ったのです。

 それ以前も、それ以後も、世界の多くの指導者や武人たちが、大勢の命を、まあ、いろいろと都合はあったにせよ、喰ったのです。


 その中には、英雄になれた人もいますが、多くの方は、結局それほどにはなれなかったのでしょう。



 『ニュー・ロンドン』の街は、すっかりと、どこまでも燃え尽きておりました。

 大方、地球上のすべての場所は、同じだったようです。

 『ニュー・ニューヨーク』も『新都トウキョウ』も『再生パリス』も・・・


「あああ、はでにやっちまったなあ。」

 ルパンさんは、さすがにあきれたように言いました。

 これこそ、あの、モーリス・ルブラン氏が生んだ裏の英雄です。

 お空の上から、廃墟となった『ニュー・ロンドン』を見下ろしていたのです。


 燃えるものは、もう大概、燃え尽きておりましたが、それでもまだ、あちらこちらで激しくぶつぶつとくすぶっております。

 まだ、泡を吹いている、がれきもありました。

 それでも、中心付近は、すべて蒸発したらしくて、ただのクレーターになっておりました。


「こりゃあ、お手上げだ。もう、どうにもならないな。せっかく、一生けん命に作り直したのになあ。」


 すると、背後から近寄って来る足音が聞こえました。

 空の上だから、足音がする方がおかしいのですが、それでも聞こえたのです。

 それが誰なのか、彼にはすぐわかりました。


「こりゃあどうも、ホ-ムズさん。」

「やあ、悪党が最後の見学かな。」

 やはり遥か大昔に、コナン・ドイル氏が生んだ正義の英雄です。


「またまた、お人が悪いや。これじゃあ、もう、おいらの仕事もあがったりだぜ。せっかく、今度ばかりは、上手くゆくと思ったのにな。まあ、あんたもな。」

「よく言うな、ほら、盗り放題じゃないか。」

「まいったな。誰か見てなきゃあ、追いかけて来なきゃあ、盗ったって面白くもない。それにもう、ほら。がらくたばかりだ。」

「そうか。」

「さっき見てきたところじゃあ、世界中、全部こんな感じだぜ。この前は、人間もちっとは焼け残ったが、今回は、ダメだな。」

「うむ。私も綿密に確認したが、まさに地球は完璧に壊滅であり、人類はすべて終わった。まあ、君の言う通り、私の仕事もだがね。これこそ、人類の英知の結晶というところさ。」

「あんたの相棒は?」

「や、さっきまで一緒にいたが・・・、どうやら先に行ったらしいな。」

「そうですかい。」

「それにしても、なんで、君がここにいるんだね?」

「そりゃあ聞くだけ野暮ってもんだ。世界中の本やデータの中から煙となって、おいらたちはようやく完全に解放されたんだ。あんたもな。その煙が、たまたまここに集中したっ、てわけさ。」

「ふうん。良い推理だ。」

「現実ですよ。ホームズさん。」

「しかし、君は私ほどには、煙になるまいに。」

「よく言いますぜ。そりゃあ、あんたの方がちっとは燃える量が多かっただろうがね、こうして現れたことには、なんの違いもない。」

「ふむ、こしゃくな。しょせん悪党のくせに。」

「ああ、おいらは、しょせん悪党さ。しかし、こうなったら、もう善も悪もない。そうでしょう?」

「まあ、肯定しよう。」

「ようがす。じゃあ、そろそろ足元が揺れてきた、よかったら、いっしょに消えてくれませんかねえ。最後の最後くらいは、平等にね。」

「よかろう、いざ。」


 二人は固く握手をしました。


 それから、共に薄黒い煙となって、さらに二人して同じ渦となり、空中に巻きあがり、やがて消えてしまったのです。


 地球人類は、もう二度と再生しませんでした。



 











































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『しょせんルパンは悪党』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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