第170話 この天気でやる気なんですかあ!?

「あれ?校内放送?」

「臨時ニュースですかねえ。珍しいですね」

「たしかに。今年は校内DJが無いから実行員会からのお知らせか臨時の連絡でもない限り入らないはずだが・・・迷子のお知らせか?」


『あー、全校生徒に告げる!俺は3年A組担任にして男子テニス部顧問の松岡修二だ。本来なら午後2時から始める予定だった、俺と伊達君子先生のシングルの試合を15分後に始める事にしたあ!雨が降ったら折角企画したエキシビジョンマッチが無駄になってしまうから、クラーク博士や校長先生にも了解を得て開始時刻を早める事となった。既に男女テニス部の連中も審判としてテニスコートに集まってるから、俺のスーパープレーを見たい奴、伊達先生の華麗なるプレーを見たい奴、まあ、それ以外の連中も集まれー!特に相沢、藤本!お前たちが生徒会室に逆さテルテル坊主を大量に吊るしてあるのを俺は知ってるから、そんな神頼みは無駄だという事を思い知らせてやるから、二人ともテニスコートに来い!これは伊達先生からの命令でもあるから必ず来いよー。もし来なかったら、お前たちだけ特別に数学と英語の課題を2倍与えるから覚悟しておけ!以上だあ!!』


「えー!松岡先生も伊達先生も、この天気でやる気なんですかあ!?」

「マジかよ。もうすぐ雨が降り出しそうだっていうのによお」

「でも、面白そうですから拓真先輩も見に行きませんか?」

「まあ、暇潰しに行ってみるかあ」

「1年B組は明日にでも来てくださいよ」

「分かった。それは約束するぞ」

「それにしても、相沢先輩も藤本先輩も災難ですね」

「ああ、まったくだ。俺も松岡先生と伊達先生のクラスにだけはなりたくないなあ」

「わたしも同感ですよ。とりあえずテニスコートへ行きましょう」

「そうだな」


「あれ?拓真君、舞さん、どうしたの?」

 俺たちは靴に履き替えてテニスコートに向かおうとしていた所を、風紀委員の腕章をした藍に呼び止められた。

「あー、俺たちはテニスコートに行くつもりだぞ」

「そうですよ。さっき松岡先生が校内放送で伊達先生とのエキシビジョンマッチをこれからやるって言ってたから、それを見に行くつもりです」

「そういえば松岡先生が絶叫してたわねえ。じゃあ私も行こうかなあ」

 そう言うと藍も靴を履き替え始めた。

「え?藍、巡回はどうするんだ?」

「あらー、今日の風紀委員の巡回ルートは指定されてないわよ。それにテニスコート周辺は大勢の人が集まるからトラブルが起こりそうでしょ?だったら風紀委員の出番よ」

「はあ、そうですか・・・」

「とにかく、テニスコートへ急ぎましょう!舞さんも早く!!」

「あー、ちょっと待ってくださいよお」

 トキコーのテニスコートは本校舎と講堂の間にあり、普段はテニス部以外の連中が注目する事はあり得ないが、さっきの松岡先生の校内放送が効いたのか人が集まりつつあった。中には校舎の窓からテニスコートを見ている連中もいるが、俺たちはコート内に用意された長椅子を1つ確保する事が出来た。トキコーのテニスコートは3面ありボールが飛び出さないよう周囲は金網で囲まれてるが、後ろからコートを観戦でいるように周囲には階段状になった簡易的な立ち見の観客席が元々2段設けられていて、そちらにも人が集まっている。

 今日の試合は3面あるうちの中央コートで行われるが、両サイドのコートを仕切っているネットが開けられていて、中庭やグランドの隅にある長椅子が全て集められていたのだが、そのうちの1つに俺と藍、舞が座っている。俺たちの後ろに立っている連中もいるし、他にも新聞部の腕章をつけた連中も来ているし、一般来場者も多数詰めかけている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る